夏目友人帳

□消えてしまえたら
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彼はとても優しい人間だった。

私は優しい彼に惹かれた。

私は彼が好きだった。

私は、妖だった。



『夏目、』

「こんにちは、マカダミア。」

『今日は学校帰りか?私と話して、怪しまれるのはお前だぞ?』

「大丈夫だよ、ここは人通りが少ないから。」

『そうか・・・なぁ、夏目。』

「なんだ?」

『お前は優しいね。優しいけれど優し過ぎるね。』

「そうかな、優しいのはマカダミアにだけだけど。」


『またまた。私は無駄に期待するよ?そのうち夏目が欲しくなって、食べてしまうかも!』

「それでもいいさ。マカダミアに食べられるなら先生に食われるよりいいな。」

『夏目、また明日、来てくれるかい?』

「ああ、来るよ。七辻屋の饅頭、好きだろう?」

『好きだよ。大好きだよ。だからね夏目、もう私は堪えられないよ。』

「急になんだ、マカダミアらしくないけど・・・。」

『夏目が好きなんだ!でも私は妖だから、夏目を縛ってしまうね。それでも好きなんだ。夏目、お前もいつか、いなくなるのだろう?』

「・・・俺も好きだ、マカダミアが。妖だとか、関係ないよ。だから泣かないで、」



私は泣いた。
夏目の言葉が嬉しくて、でもとても苦しくて。
何百年生きてきた中で、これほど人を愛おしいと思ったことはない。



『すきだよ、夏目。なぜ私は妖何だろ。』



夏目に抱かれて泣いて泣いて。
いずれ夏目を見送ると思うと、妖である自分が嫌になった。


今、泣きつかれて消えてしまえたら。
夏目の腕の中で消えてしまえたら、ずっといいのに。


消えてしまえたら。
(貴方を縛るのも見送るのもつらすぎるから)
(私が先に逝ってしまいたいのに。)

‐‐‐‐‐‐‐
妖と人間の恋が切なくて好きです

短いシリーズにしてみたい
 

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