夏目友人帳
□消えてしまえたら
1ページ/1ページ
彼はとても優しい人間だった。
私は優しい彼に惹かれた。
私は彼が好きだった。
私は、妖だった。
『夏目、』
「こんにちは、マカダミア。」
『今日は学校帰りか?私と話して、怪しまれるのはお前だぞ?』
「大丈夫だよ、ここは人通りが少ないから。」
『そうか・・・なぁ、夏目。』
「なんだ?」
『お前は優しいね。優しいけれど優し過ぎるね。』
「そうかな、優しいのはマカダミアにだけだけど。」
『またまた。私は無駄に期待するよ?そのうち夏目が欲しくなって、食べてしまうかも!』
「それでもいいさ。マカダミアに食べられるなら先生に食われるよりいいな。」
『夏目、また明日、来てくれるかい?』
「ああ、来るよ。七辻屋の饅頭、好きだろう?」
『好きだよ。大好きだよ。だからね夏目、もう私は堪えられないよ。』
「急になんだ、マカダミアらしくないけど・・・。」
『夏目が好きなんだ!でも私は妖だから、夏目を縛ってしまうね。それでも好きなんだ。夏目、お前もいつか、いなくなるのだろう?』
「・・・俺も好きだ、マカダミアが。妖だとか、関係ないよ。だから泣かないで、」
私は泣いた。
夏目の言葉が嬉しくて、でもとても苦しくて。
何百年生きてきた中で、これほど人を愛おしいと思ったことはない。
『すきだよ、夏目。なぜ私は妖何だろ。』
夏目に抱かれて泣いて泣いて。
いずれ夏目を見送ると思うと、妖である自分が嫌になった。
今、泣きつかれて消えてしまえたら。
夏目の腕の中で消えてしまえたら、ずっといいのに。
消えてしまえたら。
(貴方を縛るのも見送るのもつらすぎるから)
(私が先に逝ってしまいたいのに。)
‐‐‐‐‐‐‐
妖と人間の恋が切なくて好きです
短いシリーズにしてみたい