初姦

□初姦−謳
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(いちこさん作『初姦―亦』続き)



どうやっても眼の奥にこびりついてはなれない残像を、沁みつきそうな感触を手放してしまいたい。けれど体の奥からこみ上げる湿気を帯びた熱。

なにかの糸が沖田によって切り落とされ、慎太に誘われてしまった「あっちの世界」から俺はなかなか帰ってくることができない。

今夜先生の部屋で、龍馬が先生を抱いている。

それはもう随分まえから、当たり前に繰り返される情事だ。

夜半に帰る龍馬が酔っているのも。酒の匂いに酔わされる先生が、いつからか遠慮なく喘ぎ声をあげることも。

そして朝方、覚醒と共に俺の体を抱きにやってくる先生も。いつものこと。

「ん、以蔵がおるやか・・・どうしたが」

ガラッと勢いよく障子が開かれ、よたる足つきで俺の枕元によっこらしょと胡坐をかいた龍馬が寝ぼけた事を云う。こいつ本当に寝ぼけていやがる。

「龍馬、お前の部屋は隣だ」

「ほうかほうか。いんやぁ・・・」

目も合わせずそう告げると再びのそっと立ちあがる気配だけがした。

「間違えてしもうた」

するりと伸びてきた腕が俺の脇腹から腹の上に回される。

「おい。寝るな龍馬」

「…武市にちっくと無理させすぎよったからに。寝ようにもわしはまだまだ満たされんのじゃ、のう以蔵」

龍馬の熱いくちびるが耳穴に押しつけられぞわぞわと鳥肌が立つ感触。吐息交じりに注がれる甘ったるい声と、酒で荒れた呼吸。

「やめろ。俺はお前のものにはならん」

「武市には喜んで尻を貸してもか?」

「あッ」

絶句は肯定とみなされたか熱い舌が耳の穴をねっとりと塞ぐ。粟立つ皮膚を離してはくれず龍馬は俺を背中から回り込む様に布団に組み敷いた。

「ゆうてみぃ。…ここか?」

耳朶を舌でねぶった後龍馬は首筋を辿って乳首をキツく吸う。

「ひ、あぁ!ん…」

「ふぅむ」

「やめ、ろ…はぁ、はぁ、龍馬…ッ」

ざらりと熱い舌は唾液を含みながら脇の下の毛を食んで湿らせる。布団に押し当てられた両腕を振り払うのは容易い。けれど俺は。

「あぅ…は、龍馬…ゃあ…」

「なんじゃ、おまん…そんな顔みせよって。おなごのような恥じらいがそそるのう?脇が弱いか、ええ?」

「ああぁ!…はぁ、はぁ、はぁ」

ふるふると首を振るのが精一杯。俺を抱いていった沖田と、慎太に触れられた光景がまざまざと蘇る。そして先生が俺を無理矢理に犯すいつもの秘事を。

目をギュッと瞑れば先生の触れた感触をありありと思い起こせるのに、薄目を開けた向こうに今いるのは先生とは全然違う手つきをした龍馬。俺の欲を逆撫でながら浮かべる龍馬の含み笑い。それが俺をもっともっと辱めていく。

すっかり立ちあがったそれを龍馬は片手でしごきながら、俺を本当に貫いてしまうための最奥を指先で探し当てて、まるく撫でて笑う。嬉しそうに。

「ひと撫でしただけで、ひくついておる…そんなに欲しいがか」

「嫌、やめろ…もういい、たくさんだ…っぁ」

それも強がりじゃろうて、龍馬の呟きに反論する余地もなく俺は再び尻穴にいきり立った一物を招き入れた。脳髄を駆け上がるなにかが俺の中を真っ白に染める。

「以蔵っ…シマるのう…!っは」

だらしなく広げた股の真ん中で龍馬は俺の両膝を支えて腰を振り始める。ずりゅ、ずりゅ、と内膜を蠢く龍馬の熱。

「ああ、あああ…っ!う、はぁ、あ…あぁ」

「ええのう、どうりで、武市が手放さんわけじゃ」

「はぁ、はぁ、ああっ…龍馬、やめっ…」

力の入らなくなった両腕を振り上げて、目の前にいる龍馬にしがみついてでも飛んでしまいそうな意識を何とかつなぎとめようとする。

「こりゃあ、たまるか…!」

「龍馬っ…あああっ」

律動を早める腰の動きを、ぼんやりとして働かない視界の隅に映している。

ただただそのまま、龍馬から吐きだされてゆく熱の行方を体内に探し求めた。

白くねばついたそれは、龍馬が尻から引き抜いてしまったその場所にだんまりとして留まって、俺がひくりと身体を震わす度に穴の外へといやらしく垂れ落ちるだけだった。

そのまま幾度か同じ様に俺が頂上まで登りつめるのを繰り返し、一晩で龍馬の肌が馴染んでしまうのではないかと思える頃、ようやくその手が俺の髪をひと撫でして、

「もうじきに朝じゃ…」

乾いた声が部屋に響く。口の端から知らぬ間に垂れた唾液が冷えて頬を伝って、散々啼かされて乱れてしまった呼吸を、ゆっくりと整える。

龍馬の背中が去るのを墜ちてゆく意識の中で見守りながら。





「以蔵…。以蔵…」

小さな囁きでも凛としているあの人の声が間近に聞こえて。俺はまた夜明けに繰り広げられる習慣の情事と向かい合う。

頬をさする先生の指先に左手を重ねながら。今、先生を受け入れたなら一体どんな味がするだろう、とっくに変形した粘膜が不思議と心待ちにしているのを体内に感じて、

そのまま先生に腕を伸ばした。





「初姦−謳」-END-
「うつむき月」四萬打フリリク、いちこさまへ捧げます。




*************( *´艸`)

智生さん!
強奪許可ありがとうございました(*´ω`*)
そして、なかなかUP出来ずでごめんなさい!
こちらのお話は…
以前みのが書いたお話【初姦】の続きをいちこさんが書いてくださり、いちこさんが智生さんへと続編をリクいたしまして書いて頂いたお話です!
自分の書いたお話に続きを付けて戴けるってめっちゃ嬉しいですね(∩´∀`)∩
本当にありがとうございました!!!

みの


 

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