真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻
□第46話 雪が止んで凍った地面で転ぶと降ってる時ワクワクした自分を阿呆だと思う
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「あいっ、ありがとねー華宮さん。お疲れ様」
「いえいえ、仕事ですから」
まだ雪の残っている、二月のかぶき町。
一部が白い道を歩き、無事に大江戸警察までやって来た雛乃は、頼まれた書類を職員に受け渡した。
よろしくお願いします、と頭を下げ建物を出ると、鼻先に冷たいものが触れた。
「あ・・・また雪」
次から次へと絶えることなく落ちてくる、粉砂糖のような細かな雪は、以前降ったものの上から再び町を白く染めていく。
雛乃はそんな天気の中を、元来た方向へ歩き始めた。
少し風も出てきたようで、首元をすっぽり覆うマフラーをきつく巻き直しても寒く感じる。
肩に積もる雪も、頬を切る風も冷たい。
けれど、雛乃の心は温かだった。
腰元にある刀を見ると、ほわっと安心感が込み上げるのだ。
家族と離れ離れになり、幼くて親戚の名もまだ知らなかった雛乃にとって、例え姿が見えずとも、両親が傍についているという感覚はとても心強いものだった。
それに今は、同じ町に万幸もいる。
雛乃は嬉しかった。
けれど、過る考えがある。
(――ここに、兄さんがいれば)
どうしてもそう思わずにはいられなかった。
他の家族は皆、こうして自分の周りにいてくれるのに、彼だけがいない。
安否が不安で仕方がなかった。
「・・・兄さん」