真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻

□第45話 続き柄を書くときは両親、兄弟、祖父母の順
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屯所の正面にある大きな門に向かう途中、既に先を歩いていた沖田と土方に合流した。

二人も、先程の声の主は銀時だろうと推定して、赴くことにしたらしい。


門の近くまで来ると、来客は銀時一人ではないことがわかった。


彼の隣に一人の老人が佇んでいる。


雛乃は、その老人を知っている気がした。




(凄く昔に会ったことがあるような…懐かしい感じがする。…誰だろうあの人…)




古い記憶も漁ってみるがどうにもはっきりと思い出せない。

喉の辺りまで来ているようなのに、名前も自分との関係性も言えないことに対する不快感が込み上げる。

雛乃は首を捻った。




考え事に取り憑かれ足が止まった彼女を一先ず置いて、その間に沖田らは門のすぐ側まで到達した。


状況を察するに、銀時が門番を務める隊士に訪問を断られ、小さな口喧嘩に発展したようだ。





「いやだから、俺達は華宮雛乃の知り合いなの!で、スペシャル大事な急用があんだよ!」


「こんなだらしなくて怪しい奴が華宮さんの知り合いなわけないだろ!」


「うっせーな、いいから早く通せよ!」


「断じて認めない!」




完全に押し問答になっている彼ら。


確かに、あのようなふざけた挨拶をされては隊士が不審者だと思っても無理はない。

だが、銀時がわざわざ屯所までやって来るとは、何か重要な用件でもあるのだろう。

このまま追い返されてはこちらとしても困る。


はぁ、とわざとらしく溜め息をついた沖田が至極面倒臭そうな表情を浮かべ、二人の間に突如割って入った。




「へいへい、そこまで」


「沖田隊長!」




いきなりの一番隊隊長のお出ましに、隊士は即座に背筋を伸ばした。


沖田は彼に、銀時が本当に雛乃や自分らの知人であることを説明する。




「この人ぁ万事屋の旦那でさァ。こんなちゃらんぽらんだが、確かに俺らの知り合いですぜ。通してやんな」


「わかりました、沖田隊長がそうおっしゃるのでしたら、お通しします!」


「おい総一郎くん、ちゃらんぽらんて何かな」


「…事実ちゃらんぽらんじゃねーか」


「おいそこォ!ちっせー声で言っても聞こえてんだよ誰がちゃんぽんだコラ!」


「誰もちゃんぽんなんて言ってねーよ!まぁ言われてみればちゃんぽんみてぇな頭してっけどな!」


「天パを麺類に例えんじゃねーよ!」




また始まった。

雛乃と沖田の顔に、瞬時にその一言が浮かんだ。


そして二人は、彼らのことなど視界に入っていないかのように見事なガン無視を決め込む。


銀時と共に現れた老人は少し戸惑っていたが、この反応を見て悟ったようで、同じくスルーすることを選んだ。




「…じゃ、客間に案内しますんで」


「うむ、失礼する」




沖田が老人を屯所内に引き入れ、それに雛乃も続く。


残された彼らは雪の中くだらない言い争いを繰り広げ、門番を困惑させていた。
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