真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻

□第44話 子の代に出なかった親の形質が孫の代に出るのがメンデルの遺伝の法則
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大きな岩や鹿威しがある、日本庭園の見本のような庭を持つ立派な屋敷・柳生家。


その美麗な庭にしんしんと雪が降り積む様を眺められる、これまた立派な書院造の和室がある。

そこで今、古き知り合いが久々の再会を果たしていた。




「いやー、お前に会うのは何年ぶりかの、敏木斎」




嗄れた声で言ったのは、七十歳前後と思われる老人だ。

彼の傍らには、三味線が置かれている。




「何年つか、何十年だろ。懐かしすぎて顔忘れてたしな」




こちらは、柳生家の頂点に立つ男・柳生敏木斎。




「それに関しては本当に驚いたぞ。私はお前に会うのをそこそこ楽しみにしていたというのに、『誰?』と訊かれ、お前の門下の者に取り押さえられ・・・」


「やー、すまんすまん。老化のせいでちと記憶力がな」


「柳生の門下生に取り押さえられるなぞ、下手したら死ぬわい。今後一切止めろよ」




向かい合って座る二人は、そこで一旦会話を止め、緑茶を啜った。




「お前に刀を打ったのは、何年前だったか」


「三、四十年くらいじゃね?」


「もうそんなになるのか・・・。そうだな。確か、満が生まれて少ししてことだった」


「そういや、満ちゃんはあの時もう結構大きかったな。あの時点でもう別嬪さんだった・・・。今はどうしてる?」


「それが、戦後会えておらんのだ。いつか会えるだろうと、三味線を弾きながら渡り歩いているんだが。孫達の顔も、また見たいんだがなぁ」


「孫は確か、九兵衛と同じくらいの年だったか?元気にしてるといいけどなぁ」




そこで再び会話を中断し、お互いに湯呑を口元へ運んだ時だった。




スパーンッッ!
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