真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻
□第42話 私の友達に生理痛を『妖精がお腹を突き抜ける』と言う人がいます(実話)
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ほっと安堵の溜め息を付いた時だ。ずくっと重たい痛みが腰を突いた。
それが余りに大きな痛みだった為、雛乃はうっかり苦しそうな声を上げてしまった。
まずい、と思った時には既に遅く、三人は本気で心配を始めてしまう。
「お、おい・・・本当に大丈夫かよ」
「やっぱりここにいちゃ駄目だよ!部屋に戻って寝てなきゃ」
「あんたもしや、何かの病気じゃねーですかィ」
「――っ!いっ、いえ!!大丈夫です、病気じゃないですっ!」
沖田の“病気”という言葉に、否定が咄嗟に口を突いて出た。
こんな理由のわかりきった症状で、病院へ送られてはいけないと思ったのだ。
けれど、はっきりと打ち消し過ぎてしまったのが良くなかったらしい。
少々ムキになった沖田がくどくどと論じだしてしまった。
「どうしてわかるんですかィ。腹痛は色んな病気の初期症状って聞きますぜ。それに、雛乃が感染性の病気なら他の隊士にも移っちまうかもしんねェ。早めに処置する必要があんでさァ」
そこへ土方と山崎も便乗する。
「あぁ・・・。もし大きな病なら、今のうちに治療しておかねーと手遅れになるかもしれねーぞ」
「雛乃ちゃん、医者に診てもらった方がいいんじゃないかな」
「いや、あの・・・」
どうしても雛乃を病院へ行かせなければ堪らない、という勢いの三人。
それとなく病気だという線を回避しにかかるも、彼らは全く聞く耳をもたない。
(どうしよう・・・!このままじゃ、病院に行かされる!)
雛乃は頭を抱えた。
腰に続き、頭まで痛み出して来るとは。
大きな溜め息を漏らすと、雛乃は体を起こし、男性
三人に向き直った。
「「「・・・?」」」
「・・・はぁ」
こんな状態になったのは、心から自分を心配してのことで決して悪気があった訳ではない。
どこまでもが善意からの行為なのだ。それを責める気にはなれない。
けれども、病院でわざわざ自覚している原因を告げられ、ロキソニンを処方されるのはご免である。
この事態を脱するには、方法はひとつしかなかった。
「皆さん」
「あ?」
「何ですかィ」
「どうしたの、雛乃ちゃん」
そもそも月経というのは、将来子供を宿した時の為の準備がしっかり出来ている証拠だ。恥ずかしがるようなことではない。
寧ろ、毎月無事に訪れるのは大変喜ばしいことなのだ。
(だから私は・・・照れたりしないぞっ!)
そう思い切った雛乃は、そっと机の上にバファリンルナを置き、堂々と宣言した。
「これ飲めば収まるってわかってるので大丈夫です!空腹時に飲んではいけないので朝ご飯食べたら飲む予定です!」
(うあーっ!流石に思い切れなかったあああ!!)
生理中なので、とはいくらなんでも女の子として言いにくく、遠回りな方法で伝えてしまったが大丈夫だろうか。
バファリンルナは生理痛に効く、つまり自分は生理痛で苦しんでいるのだ、とここまで察して頂きたいが・・・。
そんな心配をしつつ三人の表情を伺うと、彼らは納得したように深く頷いた。
雛乃は胸を撫で下ろす。
やはり余計な心配をさせるよりも、初めから素直に伝えれば良かったのだ。
そう思って微笑んだのだが、彼らの納得は間違っていた。
「そっかー、雛乃ちゃん腰痛持ちだったんだ」
「今まで気付かなかったでさァ。ま、そういうことなら医者は必要ないですねィ」
「持病はさっさと報告しとけっつーの」
「え?え、あー・・・っと」
彼らは全く違う方向に合点がいった様子。
誤解を与えた形での終結となったが、病院送りは回避できたので、まぁこれで良いかと雛乃は独り言ちた。