真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻
□第42話 私の友達に生理痛を『妖精がお腹を突き抜ける』と言う人がいます(実話)
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「ん〜…」
いつも溌剌としている雛乃が、今日は何故だか呻き声ばかり上げ、ぐったりとしていた。
額にはじっとりと脂汗が浮かんでいる。
机の上に頭を乗せて、両の腕は先程からずっと腹部に宛てがわれていた。
ここは朝の食堂だ。
朝食の用意が少し遅れているらしいので、取り敢えず机に付いて配膳開始を待っている状態である。
皆がわいわいと騒ぐ中、ぴくりとも動かず一言も発せず、彼女は机に伏していた。
苦しそうな雛乃を遂に見兼ねた山崎は、心配そうに眉根を下げてこう言った。
「雛乃ちゃん。辛そうだけど、大丈夫?何なら、部屋で休んでたら?」
「そうだぜ。飯なら持ってってやっから、体調悪ぃんなら戻って寝てろ」
普段は隊士に厳しい土方も、雛乃のこの様子にはやはり心配になったらしい。
そんな優しい言葉をかけてくれた。
暇潰しにとせっせと藁人形を作っていた沖田は、脇から物珍しそうに呟く。
「雛乃が体調崩すなんざ、珍しいですねィ。入隊してから風邪ひとつひいたことねーですのに」
その声に、雛乃はうっと詰まった。
(ヤバい、勘づかれた?)
けれど、そっと見上げて覗き見た沖田の表情は至って普通のもので、何かに思い当たった風ではない。
雛乃はほっとした。
が、次の山崎の問いにより問題が起きる。
「さっきからお腹押さえてるよね?お腹の調子悪いの?」
「えっ!?あ、いや…」
聞かれたくなかった部分を質問され、ひなのは焦ってしまう。
沖田でなく彼が気付いたかと不安になり、思わず探るように山崎を見つめた。
すると、その顔がゆっくり朱に染まっていく。
(嘘っ、気付いた!?)
彼女が必死に隠している事実。
それは、所謂“女の子の日”であるということ――女性なら毎月訪れる、月経という生理現象の真っ盛りであるということだった。
今日が二日目ということで、一番辛い時期だった。
確かにこのことを想像すれば、対応に困った男性は、照れた反応もしそうである。
脂汗と冷や汗を同時に噴出しながら、雛乃の心拍数が上がっていく。
だが次の瞬間山崎が放った言葉は、
「あの・・・僕の顔、何か付いてるかな?」
「へ?」
そう言われて、雛乃ははっと気が付いた。
どうやら彼は、自分に見つめられたことに対して照れていたようだ、と。
「な・・・なんだ・・・」