真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻

□第41話 白い粉って美味しいよね。・・・塩のことだってば
2ページ/10ページ

「メイド喫茶って・・・あれですよね、メイドさんがいっぱい働く喫茶店・・・」


「はい」


「メイド服姿の女達とじゃんけんとかする小っ恥ずかしい店だろ?」


「はい」


「客のことを『ご主人様』って呼んで奉仕してくれる雌豚の宝庫だろィ?」


「そ、それは違いますけど」




隊士は冷や汗を掻きながら、詳しい報告を始めた。




「犯人が潜伏していると思われるのは、かぶき町のメイド喫茶『萌萌☆冥土乱土』です。店員として働き、役人逮捕の騒ぎが落ち着くのを待っているようです」


「「「「「もえもえ・・・めいどらんど・・・」」」」」




何故よりによってメイド喫茶に、と幹部の面々は揃って複雑な表情を浮かべる。


“メイド喫茶”という言葉は、想像してにやけてしまうのと同時に、男に何となく罪悪感を抱かせるものだ。


そんな男性陣の心の内を察して苦笑した雛乃は、彼らの代わりに話をまとめに入った。




「・・・では、そのメイド喫茶に御用改めに向かいますか?」


「あ、いえ!それは待って下さい」




と、雛乃の提案を制したのは報告に来た隊士だ。彼は言う。




「この情報は、市民からのたれ込みなんです。まだ犯人がいると確定は出来ません。証拠もなく店に押し入るのはどうかと・・・」


「う〜ん。まぁもし違っていた場合、商売の邪魔をするのも申し訳ないですしね」




その“商売”の内容を想像した男達の鼻の下が、少し伸びた。


雛乃は呆れるばかりである。




「じゃあどうしますか。犯人だという証拠を手に入れなきゃですよ」


「なら、一度その店に行く必要があるんじゃないか!?」




嬉々としてそう言ったのは、二番隊隊長の永倉。


だが、すっかり緩みきったその表情から彼の思惑を理解した雛乃は、鋭く言い放つ。




「もしそうなっても、永倉さんは向かわせませんよ。どうせメイドさんと、あんなことこんなことをしたいだけでしょう」


「うっ・・・!何故バレた!」


「欲望がバレバレの見え見えです」




魂胆を完全に見抜かれた永倉は、意気消沈し項垂れた。


まったく男はこれだから、と悲観するように雛乃が零した時、土方が口を開いた。




「だが、潜入の必要はあるかもしれねーな」


「・・・まさか土方さんもメイドさんと戯れたいんですか?」


「違ぇよ!あと戯れるっつー言い方なんか止めろ!」


「じゃあにゃんにゃんしたいんですか」


「より悪いわ!」




指に挟んでいた煙草を吸って怒りを鎮めた土方。


真面目な目付きへ切り替え、改めて提案を打ち出す。




「店員っつーことは、店に行きゃ会えるんだろ?一先ずそいつが本当に犯人なのかを確認しなけりゃ、次へ進めねぇ」


「あぁ、トシの言う通りだな。潜入を行うことは決定だろう」




土方に続けて近藤がそう言うと、各隊長も同意した。




「なら、客として入店して探りますか」




そう尋ねたのは九番隊隊長の二木。


しかし沖田がこの意見に反対した。




「いや、それだと目的の人物に確実に接触できるか怪しいですぜ。別の奴が接客に当たったら外しちまう」


「そうですね。怪しまれず、店内を自由に探れる位置に行かないと」


「・・・あれ?雛乃ちゃん、それって」


「え?」




山崎の指摘が入り、雛乃は首を傾げる。だが、他の皆は気が付いたようだ。


その場にいる全員の視線が、雛乃に集中する。




「え、あの、何ですか?」




未だ一人、どういう状況になっているのかわかっていない雛乃は問いかけた。


そんな彼女に、山崎が教える。




「怪しまれず、店内を自由に探れる立ち位置って・・・メイドさんじゃない?」


「そうなると、メイドとして潜入調査を行うのが有効ですねィ」


「かと言って、男がメイドとして働くなんてカマバーみてぇで気色悪い上に、まず雇ってもらえねぇだろ」




そこまで言われて、雛乃はやっと、自分に集まった視線が何を意味するのかを悟った。




「わ・・・私にメイドとして潜入しろと!!?」




全員が頷きを返し、幹部による会議の結果、雛乃がメイドになることは決定したのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ