真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第1巻

□第9話 微熱少年〜僕は全力で少年です。全力で微熱です。誰か助けて〜
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十月も終わりに近づき、冷たい風の吹くある日。


屯所はピンチだった。




なんと幹部メンバーを含む約二十人が一斉に風邪をひいたのだ。


しかも医療班も病原体を突き止められない。


なぜか元気な近藤は患者を隔離し、元気な者たちは他の部屋を使って生活している。




で、患者の看病をしているのは。




「皆さん、食事ですよ〜」




そう、雛乃である。


その免疫力と体力の前には病原菌でさえひれ伏すのか、弱り切った隊士達の中で唯一、彼女だけは元気溌剌なのだ。




「はい、山崎さん」


「ありがとう、雛乃ちゃん」




雛乃は体を起こすのを手伝い、食事を渡していく。




「雛乃ー。はやく飯くだせぇー」


「はい、ちょっと待って下さい」




沖田が急かすので、雛乃は沖田の方へ向かった。




「はいどうぞ、沖田さん」


「あ、土方さんの分もくだせェ。あいつはマヨで生きていけ・・・」


「炭水化物を食わせろ」




雛乃は土方の所へ行き、体を起こすのを手伝った。




「そういえば銀時と新八くんも風邪引いたそうで、神楽ちゃんは元気で大暴れだとか」


「あっちも大変だな・・・ゲホッ・・ゲホゲホ・・・」


「大丈夫ですか?」




土方が咳き込んでしまい、雛乃は背を擦った。




「体起こすと辛いんじゃないですか?」


「でも腹は減ってんだ・・・ゲホッ・・・」


「そのまま死んじまえ土方コノヤロー」


「っせーな。ゲホッ・・・」




病気だろうと何だろうと口喧嘩の収まらない二人に雛乃が苦笑した時、伊東がやって来た。




「伊東参謀!ダメです、うつっちゃいますよ!」


「大丈夫だ。土方の動けない姿でも笑ってやろうとマスクも付けてきた」


「てめぇ・・・回復したら殺すぞ」




また喧嘩か・・・と雛乃が2人の間から身を引くと、襖の方から鈴の音が。


これは子猫に付けてやった鈴の音・・・。




「レンっ!」




見るとレンは体温計を銜えて遊んでいた。




「こら!こっちに来ちゃだめって言ったでしょ?」




雛乃はレンを抱き上げて言った。




「私一回部屋に戻りますね」




隊士達は青い顔で、しかししっかりと頷いた。























――筈だったのだが。


まぁ、病人の傍にきちんと付いていなかったのは悪い。

が、病人が暴れるのはもっと悪い。




「どういう事ですか、これ?」




雛乃が戻ってみると、部屋は荒れ、隊士達はぐったりとした様子で倒れていた。


部屋の中央には、荒い呼吸を繰り返す、汗だくの土方と伊東がいる。

どうやらこの二人が乱闘を繰り広げたらしい。



雛乃はわなわなと肩を震わせ、大声で怒鳴った。




「病人は寝てなさーーーいッ!!!」


「「「はーーーい!!!」」」




体調の回復はもう少し先になりそうな気がする隊士達だった。
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