真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第1巻
□第6話 仕事先に居たら嫌な上司・部下ランキング!
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雛乃の暴走から一週間。
江戸は10月に入り、少し肌寒くなってきた。
この日、雛乃は隊士に稽古をつけるため、沖田と道場へ向かっていた。
「とりあえずダメな奴には力で、叩き込んで教えてくだせェ」
「え゛・・・。い、いいんですか?そんなの・・・」
沖田からそんな説明を受けて道場へ入ると、隊服ではなく道着を着た隊士達が、30人ほど並んで立っていた。
「稽古は一週間で分けて行うんでさァ。今日はコイツらでィ」
「はいっ!」
雛乃がはきはきとした返事をすると、沖田は小さな笑みを浮かべた。
「おいテメェら、いつも言ってるがどんな練習でも手を抜くんじゃねェ。いいな?」
「「「「「はい!!」」」」」
先ほどまでとは打って変わって、真面目な表情の沖田を見て、
(この人も、やる時はやるんだ)
と思った雛乃だったが、やはり沖田は沖田なわけで。
「じゃあまず、一人一発土方に蹴りを入れてくる事!」
「沖田さ〜ん・・・」
「へいへい、冗談でさァ。じゃ、適当に二人一組になって試合するように!」
沖田がそう言うと、隊士達はペアを組み始め、やがてあちこちから竹刀がぶつかり合う音が聞こえはじめた。
「じゃあ雛乃は手前の隊士から見ていってくだせェ」
「わかりました!」
こうして雛乃の指導が始まったわけだが、沖田・土方に勝る人物が、隊士達を見て何と思うか想像はつくがろうか。
もちろん、欠点だらけである。
ダメ出しも半端ではない。
「だめ!ここで足に力入れないと、次の攻撃で隙を作る事になるから!」
「こっちから来たらどうするの?360度、気配を感じてて」
「ほら、倒れる!重心の移動が遅い!」
ってな具合に、隊士達の欠点を思いきり突きまくる雛乃。
隊士達はもうぐったりである。
「足が空いてる!空いてる所は狙いに行かなきゃ!」
「無駄な動きが多すぎ。身軽さを利用して!」
「体力だけじゃ勝てない、頭を使って!」
いい加減に疲れてきた隊士達の動きが、鈍くなってきた。
それに気がついた雛乃は、沖田に相談に行く。
「あの、沖田さん。このまま続けても皆さんは・・・」
「じゃあ身体に叩き込んでやってくだせェ」
「いや、でも・・・。い、いいんですか?」
「仕方ねぇだろィ」
と、いうわけで。
バシイッッ!!
「ほら倒れた。何回言ったら分かるの?身体を後ろに引けと言っているだけ。早く立って下さい」
その様子を、怯えて見ている隊士達。
すると。
「そんな余裕があるなら私と勝負します?」
「「「れっ、練習に集中しまーす!!」」」
雛乃の黒い笑みと冷酷な目は効果覿面。
隊士達はそそくさと練習に戻って行った。