真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻
□第48話 ナルシストはうざいのにポジティブだから長生きする、そして憎まれっ子世に憚る
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真選組屯所内には、時々幕府から視察にやってくる松平や仕事にきた上層部の人間を通し、時には参考人の話も聞く、客間がある。
現在そこには、見慣れた面々が集っていた。
万事屋から、銀時、新八、神楽。
真選組の近藤、土方、沖田、雛乃、山崎。
そして万幸。
彼らは普段ここに居る要人などとは全く違った人間だったが、その場の空気は、いつもの倍以上に張り詰めていた。
「うむ・・・どうしたものか」
と、腕を組む万幸が重々しく呟いた。
「まさか雛乃の兄ちゃんが江戸にいるなんて思わなかったアル。それが雛乃のこと狙うなんてますます考えなかったネ」
「ま、まだ決まったわけじゃないよ、神楽ちゃん・・・」
「いや、多分確定だ」
新八の弱々しい擁護をばっさりと切り捨てたのは、銀時の声だった。
「悪いな、黙ってたんだ。先生から来た手紙。あれの用件は、黒野薔薇の真相を知れってだけじゃなかったんだよ」
「えっ。・・・先生、なんて言ってたの」
「和樹、っつー男が江戸に来てるって。雛乃の兄貴の華宮和樹と特徴が一致してるけど、本物かはわかんねーから、確証が持てるまでお前には話すなって言われたよ」
「・・・そう・・・」
銀時の言葉で、更に雛乃の中での思いが確かなものへと変わっていった。
彼女は項垂れるように頷く。
「わたしだって認めたくないけど・・・確かに、あれは、兄さんだった・・・と、思う。顔立ちも、目も、ちょっと癖がある髪の毛とかも・・・会えなくなった日の兄さんを、そのまま大きくした感じだった」
翡翠の目が悲しげに沈む。
「・・・雰囲気以外は」
その言葉に、客間は一瞬凍りついた。
しかし、雛乃が酷くショックを受けるのも仕方ない。
実の兄が豹変し、最愛のはずの家族に斬りかかったのだから。
兄に代わって言い訳するように、銀時は手紙の内容を伝えた。
「先生は、目撃されている和樹は精神を病んでるようだって言ってた。うわ言を呟いてな。もしあれが華宮和樹だったとしても、本物のそいつかは決まってねーよ」
うん、と、聞こえるか聞こえないかくらいの声量で雛乃は返事を寄越した。
だが、項垂れる細い肩にかける言葉は誰も持ってはいなかった。
一同は、せめて重たい空気をそっと温めるように、ゆったりと落ち着いた口調で話を続けた。
「まぁまぁ、皆さんそう沈むんじゃねーですよ」
「そうですよね!!こういう時こそ、一致団結ってやつです!!」
「わあ、山崎さんいいこと言いますねー、地味キャラなのにこの小説ではこんなに喋らせてもらえてほんと良かったですね!!」
「ちょっと新八くん!?あっやば涙出てきた・・・」
「ザキの地味は今に始まったことじゃねーです。それより、俺ァ落ち込むのはこれ聞いてからにしろっつってんでさァ。問題はまだあるんですぜ」
「おお・・・!そうだったな。雛乃を襲ったのが雛乃の兄だったとして・・・それでは終わらんのだ」
「え?」