真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻

□第46話 雪が止んで凍った地面で転ぶと降ってる時ワクワクした自分を阿呆だと思う
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「あれ、雛乃ちゃんもう帯刀してるの?」




時刻は朝の七時を回ったところ。


今朝も大いに賑わい混雑している屯所の食堂で、何とか席を確保した山崎は、その隣に一緒に座っている雛乃に訊いた。




「そういやミーティングの時も持ってやしたねィ」




こちらは、ご飯の上に生卵を落とし、上から醤油を垂らしている沖田の言葉だ。




「雛乃、お前・・・まさか寝る時も持ってんのか?」




そして、ご飯の上に豪快にマヨネーズを撒き散らす土方。

彼の朝食だけが唯一個性的で、このテーブルでかなり浮いていた。


しかし、これは毎朝繰り返されているいつもの光景。

今更リアクションなどとらない雛乃は、にこっと口角を上げて答えた。




「えへへ・・・お父さんとお母さんが宿ってるって聞いたら、何か家族みたく思えちゃって、つい・・・」




そんな彼女は、周囲の男性のものより少なめに盛られたご飯の上に、よくかき混ぜた納豆を乗せる。


上機嫌でそれを食べ始める様子を見て、三人は少々呆れながらも微笑んだ。

流石に四六時中刀を持っているのはやりすぎだと思うが、これまで家族に憧れ続けた彼女が、祖父の万幸と、刀に宿る両親に再会できたことを彼らも喜ばしく思っているのだ。




「そういえば万幸の爺さんは何処で生活してるんだ?暫く江戸に留まるんだろ?」


「あぁ、おじいちゃんなら、柳生敏木斎さんが泊めて下さっているそうです」


「ザキー、味●素取ってくだせェ」


「はい。沖田隊長、どうぞ」


「あ、終わったら俺にも貸してくれ、総悟」


「えええっ、マヨネ丼に●の素かけるんですか!?美味しいんですか!?」


「雛乃、いいか、俺は最近マヨネ丼にツナ缶の油をかけると美味しいと発見したんだが、なんと味の●もそこそこイケルと昨日の夜気付いたんだ」


「人生で最も使えない知識ランキング上位に食い込んでますねィ」




食卓の上で和やかに交わされる会話。


そこへ何処からか飛び込んできたのは、雛乃を呼ぶ声だった。




「おーい、雛乃ー!」




朝食を求めて溢れかえる人の間を縫い、何とかこのテーブルまで辿り着いた声の主は、手にした書類の束を並ぶ食器の横へ置いた。


突然遣ってきた隊士に、雛乃は納豆の糸を巻き取りつつ小首を傾げる。




「何ですか、これ?」


「局長からだ。今日の雛乃の仕事は、これを大江戸警察に持っていくことだってさ。よろしく!」




こうして雛乃は、大江戸警察までのおつかいを命じられた。
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