真選組の華 〜真選組女隊士物語〜 第2巻

□第40話 夜明け前の町と酔っ払い 〜The gait is doubtful. 〜
1ページ/7ページ

師走は文字通り確かに忙しかったが、年が明けてからも大層忙しかった。

だが、そんな一月も末である。


冷たい風がかぶき町を吹き抜ける夜、とあるキャバクラ店『スナックすまいる』には、見慣れた顔触れが揃っていた。




「あら、そうなの?」


「そうなんです・・・。こういう所初めてで」


「そう。でもそんなにそわそわしなくても大丈夫よ。馬鹿どもが財布を空にするってだけの店だから」


「え。あ・・・。そ、そう・・・ですか・・・」


「ちょっと妙、確かにそうだけどもう少し言い方に気を配りなさいよ。雛乃ちゃん引いてるわよ」




近藤達の息抜きに付き合わされた雛乃は、本来女性が訪れるような店ではないここに来てしまっていた。


スナックの独特の賑やかで艶やかな空気に戸惑っている雛乃は、妙とおりょうにそんな説明を受けていた。


美しい頬笑みを浮かべて容赦ない言葉を吐いた妙に、雛乃とおりょうは冷や汗をかく。


この笑顔で、彼女は何人もの男の身包みを剥がしてきたのだろう。




一方その隣では、たまたま居合わせた銀時が、上機嫌でジョッキを掲げていた。




「はー、やっぱ酒はいいぜ。おい神楽ぁ。今日は真選組の奢りだから、好きなもん好きなだけ頼んでいいぞー」


「きゃっほォーい!!おいそこの女ァ、酢昆布百個持って来るヨロシ!」


「え、酢昆布・・・ですか?」




奇妙な注文を受けたキャバ嬢が首を傾げた更にその隣には、近藤・土方・沖田らが集まっている。


クールな表情でグラスを傾けながら、土方が問うた。




「なぁ、近藤さん」


「何だ、トシ」


「何時真選組の奢りになったんだ?」


「・・・さあなぁ」


「おいてめーらァ、今夜は土方さんの奢りですぜィ!!好きなだけ飲みなせぇ!」


「総悟、勝手なこと吐かしてんじゃねぇぞ!!」




店内で抜刀しかけた土方を、キャバ嬢達が慌てて止めに入ったその横では、誰からも忘れ去られた山崎と新八が縮こまり、仲良くやっていた。




「いやー、盛り上がってるね」


「そうですね。お蔭で僕たちは居ない存在になってますけどね」


「あはは・・・」


「・・・」


「・・・」


「「・・・はぁ・・・・・・」」




相も変わらず賑やかなメンバーが大騒ぎしている、深夜十二時。


突然店内のキャバ嬢達が歓声を上げた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ