小話

□Hotel Cävalry ・・・R18
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 ふわん


 何か柔らかなものに包まれたような感覚がして、外の音が遠くなる。フロントは完全に無

人なようで、パネルで部屋を選ぶのかと辺りを見回すと、目の前にあった壁がゆっくりと静

かに開口していく。

思わず2人で顔を見合わせた。

「なんか、すげえな」

「確かに高級ラブホテルって感じだわ」

 神楽と新八が「高級アルカラナ(ですから)!」と主張していた、そのとおりだ。

 カードを見ると、さっき蝶が舞っていたホログラムの個所に「1046」の数字が表れてい

る。

「部屋番号か?」

「だろうな…」

 中に入れば、ふかふかした絨毯が敷き詰められた廊下が続き、落ち着いた深いこげ茶の色

調の壁にずっしりと重厚な扉が埋め込まれている。きょろきょろしながら歩いていた2人

は同時に「1046号室」を見つけた。

「どうやって入るんだ?」

「これじゃねえの?」

取っ手の淡く光る部分にカードを翳すと果たして、カチリと音がする。扉を押す。

「こいつは…」

「すげえ…!」

中に想像を軽く超える広くて豪華な部屋があった。しかも、この端々まで贅沢な趣向を凝

らしまくってる部屋は一つではないようだ。

「おい!こっち!」

 先に脇の部屋を覗き込んだ銀時が興奮した声で土方を呼ぶ。

「これ見ろよ!」

『ルームサービスはすべてお部屋の料金に含まれております。お好きなお食事お飲み物を

お楽しみください』

「食べ放題ってことかよ!?」

 入って左わきの部屋には猫足のテーブルとゆったりしたテーブルにカトラリーがセット

され、幾種類もの食事がボタン一つでいつでも提供できるようにされていた。

 しかもさあ、と銀時がキラキラと眼を光らせて、部屋の中ほどに鎮座している大きなガラ

スケースに駆け寄った。

「なにこのケーキの種類!?これ全部食べていいってか?!パフェとかもあるじゃん!苺

牛乳まで!」

「お、おい!これ!!」

 興奮しまくっている銀時をさらに興奮した声で土方が呼んだ。土方の前にも大きなガラ

スケースがある。

「こんな沢山の種類のマヨネーズ、見たことねえ!!」

 土方がかぶりつきそうな目で見ているガラスケースには、すんなりしたフォルムの白い

ボールがずらりと並び、その中には美しい卵色の種々とりどりのマヨネーズたちがたっぷ

りと入っている…。

「まじか…?」

「こんなサービスが充実してるとこあるんだなっ!」

 …………そうね。あるんだね。現に目の前にあるしね。銀さんの常識の中ではなかったけ

れどもね…。 

 くくっと笑いが込みあげた。

まあったく、あいつらと来たら。

『びっくりするようなことあるかもしれませんけど、それも含めて楽しんできてください

ね!プレゼントですから!』『サプライズアルヨ!』

ニンマリ笑っていた新八と神楽の顔が目に浮かぶ。

嬉しそうにガラスケースを覗き込んでいる土方の隣りに歩み寄れば、目をキラキラさせ

たまま土方が銀時を見た。

(ああ、もうっ!マジで可愛いな、この野郎…!)

 自然と土方の頬を包むように手が伸びていた。一瞬だけ丸くなった土方の眼が次の瞬間

には艶やかな笑みを含んで弧を描き、心得たように閉じられる。

(なんつうか、おめえ、どんどん色っぽくなってるよね)

 顔を傾けて吸いつくように唇を合わせた。舌で舌を丹念に愛撫する。溢れてくる唾液を余

さず味わう。

「んん」

鼻に抜けるような声を土方が出した。体の芯に点った熱がぽっと上がる。土方の肢体から

力が抜けていくのがわかった。

「マヨは終わってからにしような」

 耳元に甘い声を落とす。土方がうっとりした顔で目を見開き、小さく頷いた。

「シャワー浴びてくる」

「おう」



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