小話

□某月某日の真選組屯所(後編)
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「なぁトシ、銀時のことだがなぁ、」

聞き慣れた声がした。植え込みの陰から覗き込むと案の定近藤さんと土方さんがなにか話しながら近づいてくる。

銀さんがピクリと反応した。

「何とか出来んもんかな……? 隊士達から相談されちまってさ。いや、隊士達としてはさ、もっとお前と触れ合

いたいんだよ。それを最近は銀時に阻止されちゃってさ。まあ、お前たちが仲がいいのは良いんだけど、外の奴等

もトシと仲良くしたいって言うかさ」

銀さんのこめかみにビシっと血管が浮かんだ。土方さんはちょっと困ったような表情を浮かべている。

「前は、みんなで屯所でどんちゃん騒ぎして無礼講になっちまって、いつもはトシなんかととても話さないような

若い連中とかがトシにぐだぐだ絡んできてたりしてたじゃん」

「そうだったなぁ」

 土方さんが懐かしそうに呟き、

「なんだと?」

 銀さんが不穏な感じに唸った。そして、

「おいおいおいおい、」

 あろうことか二人の前に出て行こうとする。

「ちょ!」

 腕を捕まえようとしたら、ぬるっとして掴めない! 慌てて腰にかじりついた。

「ぶっ」

 思い切り二人でコケた。

「誰だ!?」

 土方さんに気付かれた!

 げっ

 僕は逃げようとしたのに、

「土方クン! 浮気は許さねえぞ!」

 ひっくり返ったまま銀さんが叫んだ。

「ちょっと、銀さん!」
 
何考えてんだ!? この人! 今、僕らぬめぬめした昆布臭のスーツ着てて死ぬほど怪しい上に、うっかりしたら

世界爆発しちゃうって言うのに! もしかして、自分自身じゃなくても他の誰かと会ったってマズかったりするん

じゃないの? ほら、タイムパラドックスとかさ。

 だけど、

「な、て、てめえか?」

 土方さんは狼狽えたように、こっちに向けていた足を止める。

「ンなとこで何してる?」

「てか、今の話なに?」

「な、何でもねえよ! ちょ、ちょっと近藤さんと話してただけで、言っとくが浮気でも何でもねえ!」

 そのまま逃げるように土方さんは去っていった。

「待ってよ〜、トシ〜。俺、もしかしてマズいこと言っちゃった? ねえ!」

 近藤さんが情けない声で追いかけていくのが聞こえる。

「助かりましたね」

「どこがだよ? てか、あとで、どういうことかきっちり問い詰めてやらねえとな」

 本当に、嫉妬深い男ってみっともない。

 まあ、何はともあれ、切り抜けられて良かった。

 ヨイショと起き上がった。

 ガサ

 ん?

 何かが僕らの下敷きになってる。

 白いヒラヒラしたものが…、

「ああっ!」


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