1.5W副長(第二部) 完結
□第16章 崩壊 その漆
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「くそっ!」
鋭く突いた刀を簡単に弾いて佐々木が土方の懐に飛び込んでくる。
(俺さえこいつを振り切れれば、ここから撤退できるのに・・・!)
沖田も隊士達も今ならば、この場を脱出することは難しくない。
ただ、土方だけがどうしても佐々木の攻撃を躱すことができない。
ゴーンとどこかで鐘の音が鳴った。
(酉の正刻・・・!)
江戸城から軍勢が出る・・・!
佐々木がにやりと笑みを漏らした。
(このままじゃ皆を巻き添えにしちまう・・・。)
「総悟!!」
佐々木の太刀を受けギリギリと軋む刀を支えながら、土方は叫んだ。
「隊士達を連れて行け!俺は後から行く!」
その言葉に沖田が返事をする。
「あんた、一人でおっ死ぬ気で?嫌でさ。指揮執る奴いなかったら近藤さん助けられ
やしねえ!」
ぐっと詰まった。
確かに見廻り組の中に一人だけ残されれば、それを突破するのはほぼ不可能。
だが、このままでは・・・。
じきに幕府の軍勢が到着する。
潮騒のように押し寄せてくる幕府の軍に呑みこまれる・・・!
土方はきつく唇を噛みしめた。
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