1.5W副長(第二部) 完結

□第13章 崩壊 その肆
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近藤は、見廻り組隊士に背を押されるようにして黒い車に乗せられた。

乗り込む寸前に土方を振り返る。

「トシ、みんなをよろしくな。」

バタンと車の扉が閉じた。

ガラス越しの近藤の横顔がひどく遠く感じられた。

近藤に二度と会えない、そんな胸騒ぎがして慌てて首を振ってそんなはずないと否定

する。

こんな風にして近藤を幕府に渡して良いのだろうか。殴り倒してでも近藤を止めるべ

きではないのか・・・?

もしかして、取り返しのつかないことをしているのではないかと、不安が土方ののど

元をせり上がる。



後部座席に近藤を収めた車が発車し、佐々木がおもむろに土方の方を見た。

「そういえば、あの地味なアレあなたのとこの監察ですよね。」

ぎょっとして土方が佐々木を見返す。

「あ、やっぱそうでしたか。そうじゃないかとは思ったんですけど、どうも印象が薄

くてはっきり思い出せなかったんですけどね、」

佐々木の口角がくいと上がった。

「城の天井裏なんてとんでもないとこにいたんで、私が殺しておきましたから。」



地面がぐにゃりと歪んだ気がした。

「な・・・に・・・?」

「あんなとこにお仲間がいたってことが近藤局長にとってはすごく不利な情報にな

ってしまいましてね。すみません、私のせいで・・・。でも、わたしも仕事ですしね。

恨まないでください。」

佐々木はそう言うと馬鹿丁寧に頭を下げてくるりと土方に背を向けた。

と、すぐ振り返り、

「そうそう城からの命令でこちらの屯所の監視は当分続けさせてもらいますから。ま

あ、これも命令ですから気を悪くしないでください。」




いったい俺は何をしたのか。

心臓が冷えて目前の光景がはるか遠くに感じられた。

オレノセイデ、コンドウサンニハンギャクノウタガイガカカッタ。

オレノセイデ、ヤマザキガコロサレタ。

「副長!」

「副長?!」

呼びかける隊士の声がひどく遠くに聞こえる。

土方は呻き声をあげて、その場に崩れ落ちた。




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