1.5W副長(第二部) 完結

□第7章 bitter chocolate その肆
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真選組が出動すれば、俺が腹かっさばくだけじゃすまねえ。天人の支配下におかれな

がらも何とか保持してきた警察権もこの星の人間から奪うことになる。

堪えてくれよ、と呟いた松平の顔が脳裏に去来する。

ヒュドラの警察権限を返してもらう、と言った乾いた声。

そして、この数日どこにいても必ずまとわりついてくるねっとりした視線。

見張られている。

俺達が最後まで幕府に忠誠を誓い続けるかどうか。

奴らじっと窺ってやがる・・・・。



土方はぐっと奥歯を噛みしめた。

「だめだ。」

「何でだ?!!」

近藤が噛みつきそうな顔で土方に詰め寄る。

「何でもだ!これは俺たちのちっぽけなプライドだの感傷だので片づけていい話じ

ゃねえんだ。」

「だが!目の前になんにもしてねえのに拷問されてる人たちがいるんだぞ?!無実

の罪に苦しんでいる人を見過ごして、何のための俺達だ?!」

近藤が怒鳴る。

「副長!!」

隊士達も哀願するかのような叫び声をあげた。

土方は隊士達を無視し、近藤の顔を正面から見据える。

「俺達は幕府という組織の端くれに過ぎねえ。」

土方はできる限り感情を押し殺し、冷たい声を出す。

「トシ?!」

「副長、ここで町の人見捨てたら、あんた本当に鬼だぞ!」

「何とでも言え。」

土方は立ち上がり、隊士達を睥睨した。

「いいか、万が一にも隊規を乱すことは許さねえ!勝手なことをする奴は俺が斬る。

わかったな。」

土方の気迫にシンと誰もが押し黙る。

「会議は終了だ。持ち場に戻れ。」

土方はそういうと部屋を出た。背後に不満と悲嘆の混じり合う怒号が沸き起こるのを

聞きながら。



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