小話

□某月某日の真選組屯所(後編)
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「実はな銀の字。つい昨日、タイムマシンをちょうど2つばかり完成させたばっかじゃ」

「マジかよ! 爺さん、エスパーかよ!」

「まあな。わしゃ天才技術者じゃからな」

 源外さんの鼻が得意げにぴくぴくする。

「使い方は簡単。装着してから行きたい時間と場所をセットしてボタンを押す。さすればその時間に到達し、そし

て30分後には自動的に元の時間に戻ってくる。実にシンプルかつ安全なタイムマシンんじゃ。まあ、ちょっと着

心地が今一つなのが玉に瑕だがな」

「30分だけかよ」

「何だ。不満か? 不満なら無理に使ってくれなくてもいいがな」

「ちっ、足元見やがって。わあったよ。それ使わせてもらうわ。どこにある? 貸してくれ」

「こっちじゃ」

 源外さんに案内されて奥に入ると何やら昆布のようなぬめっとした臭いがした。

「何の臭いだよ?」

 銀さんが鼻をつまむ。

「なに、ヌメック星のヌメヌメボールを再現しようとしていてな。その残り香じゃ」

「ふーん」

 確かに床がぬめぬめしていて、

「わあっ」

 足が滑って転びそうになる。

「気をつけろ。そんなことじゃこのタイムマシンは着られんぞ」

「どうして?」

 タイムマシンって着るものだったっけ?

見れば源外さんが手に持っているのは、確かにダイビングする人が着るウェットスーツのようなもので。

「これが、タイムマシン〜!? てか、ヌメヌメじゃねえか!こんなん着たら体がヌメヌメになるわ!」

銀さんが思い切り文句を言う。そうだよね。それにちょっと昆布みたいな臭いもする…。

「まあ、ヌメヌメボール作ろうと思った夢の跡じゃからな。だが、ぬるっと着たり脱いだりできて便利じゃぞ。そ

れに、ぬめぬめはするが痕跡は残らん。歩いていてそこら辺にぬめぬめした足跡が付いたら嫌じゃろうが」

「ンなもん当たり前だわ! てか、結局ヌメヌメボールの方は作れなかったのかよ!?」

「あー、まあな。ヌメヌメボール作ろうとしてたらこれが出来たわけじゃから」

「おいおい大丈夫なのかよ!? 俺たち別に神龍に会いたい訳じゃないからね!? どっちかっていうと必要なのは

青色の猫型ロボットの方だから! なんか大事なとこ間違えてねえだろうなあ!?」

「心配いらん。それにそもそも○ラゴンボールにはヌメヌメボールは出てこねえよ。で、どうすんだ? いるのか

いらんのか? 今ならモニタリングということでおおまけして10万円じゃ」

源外さんがピンク色の歯茎を剥いて笑った。


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