小話
□過ちと百万の後悔 後編
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土方、おまえを初めて見たのは高校2年になったときの始業式だった。おまえは、俺
たちの前で転校の挨拶をしていた。
緊張に顔を微かに強ばらせていたけれど、おまえは挑戦するような強い視線で俺たち
のことを睥睨していた。そのくせすっと流す視線は高校生とは思えない艶と翳りを帯
びていて俺の胸の中をざわりと撫でた。
その大人びた空気に触れたいと思った。
部員の勧誘にかこつけて話しかけてみれば、返ってきた反応は年相応なもので、拍子
抜けすると同時に思いがけないほど好感を抱いた。剣道部に誘ったとたん零した涙に
妙な庇護欲がかきたてられた。
剣道部に入った土方は毎日俺に追いつこうと真っ直ぐな目で挑んできて、同い年の男
なのに俺はおまえが可愛くてしょうがなかったんだ。
純真でまっさらな土方。
土方はほかの連中にはあまり近づかず、放課後はいつも俺と一緒にすごしていた。
土方が俺にとって特別な存在になったのはいつのことだったのだろう。
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