恋情の記憶(R18)

□恋情 その2
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「土方?!!!」

土方は自分の名を呼ぶ声に動きをとめ相手を見つめた。

銀色に光るくるくる天然パーマ。

人に心を読ませない紅い眼。

土方の視界がぐらりと揺れた。

お、おいっ!!

焦る声を余所に意識が遠のいた。






『追討軍に白夜叉がいるという噂です。』

脳裏に声が響く。

やめてくれ・・・!

全身が冷えていく。大切なものをすべて失った俺からこれ以上お前は何を奪おうとい

うのか・・・・。





誰のものかわからない意識が自分自身の意識に溶け込んでくる。





「ひじかた。ひじかた・・・!」

浮上していく意識の中であの声を聞いた。

はっと目を見開く。

目の前に、心配そうに見つめる2対の目があった。

「土方?!気がついたか!」

「ふ・・・副長・・・!!」

ゆっくり体を起こし、目の前にしゃがみこんでいる二人を見た。

「・・・・だれだ?どうして俺の名を知っている?」

「ど、どうして知ってるって・・・・。」

男たちが絶句する。

「わからねえの?俺のこと。」

銀時が表情をこわばらせ、土方の顔を覗き込む。

土方は瞳を震わせながら無言で首をふる。






なぜこいつが現実の世界にいるのか・・・?!

肌が粟立つ。

夢の中にしか存在しないはずなのに・・・!

「ふ、副長。俺は?俺、山崎です!」

銀髪の男の隣にいた地味な男が身を乗り出して話しかけてきた。

「・・・いや、知らねえ。人違いじゃねえのか?副長ってなんだ?」

土方の言葉に二人とも再度固まる。

そのまま、沈黙が場を支配する。

「・・・や・・・あ・・・その・・・いきなりすまねえ。驚かしちゃって。なんでも

ないんだ。ひ、人違いだったみたいだな。具合悪いのか?」

銀時が一生懸命言葉を紡ぎだした。

「あ、いや、こっちこそ、すまねえ。・・・ちょっと体調がすぐれなかったもんだから。」

土方もぎこちなく返事を返した。

「あ、そ、その・・・俺達、武田観念斉って奴・・じゃなくて人を訪ねてきたんだけ

ど、その、このうちって・・・?」

「ああ、ここは武田の家だ。」

土方があっさり首肯する。

「え?あの、おめえ、どうしてここに?そのどういうご関係デスカ?」

銀時が不自然な調子で問いを発した。

土方の濃紺の目がかすかに細められる。

そして静かに答えた。

「俺か?俺は武田の愛人だ。」









「まじかよおおおお〜〜〜〜〜〜!!!!!」

まるでロボットのように固い動きで土方の前から辞去し、マンションの外に出ると、

銀時はなりふり構わず、絶叫した。

道行く人々がぎょっとして振り返る。

「ねえだろ。ねえだろ。ねえだろおおおお〜〜〜?!!!」

同じく真っ青になっている山崎は銀時をたしなめようとするそぶりも見せず、がっく

りその場に膝をついている。

「どおいうことだよっ!なんで?!あいつが愛人〜〜?!世界が爆発したってねえだ

ろうよ。それ!!どういうこと?ひょっとして、もう爆発しちゃったの地球。もしか

して、温暖化進んで爆発してる?!」

「旦那・・・・。」

全身全霊をこめて、今聞いた話を否定している銀時に山崎が話しかけた。

目が涙目になっている。

「ジミー、俺、頭変になった?幻聴きいちゃったかなあ?おめえ、あいつが言った言

葉聞いた?」

「はい・・・。愛人だって言ってました・・・。」

「じゃ、幻聴じゃねえってこと?!! あいつマジでそう言ったんだよな?!」

「はい・・・。」

「土方が愛人?!愛人て、もしかしてア・イジンとかいうなんか別のモノの意味はね

え?」

「ア・イジンと言うものの話は聞いたことはありませんけど・・・。」

「おめえよお!なんだよっ!いいのかよ!ずっとあいつの部下やってたくせに、受け

入れちゃうわけ?!」

「旦那、思い出したんですね・・・・。」

「あ?」

銀時の動きが止まった。山崎の顔をまじまじと見ると目が驚いたように丸くなった。

「あれ?」

「わかりますか?俺のこと。」

銀時の口がポカリと開く。

「おめえ・・・。」

山崎が銀時の顔をじっと見つめて頷く。

「・・・・・・誰だっけ?」

「おいいいいいっ!!」



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