1.5W副長(第三部) 完結
□第二章 願い、執着、追憶 その2
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土方。おめえがふとした瞬間に向けてくるまなざしが俺の心臓をドキリと跳ねさせる。
何を言うわけじゃねえのに、俺のこと好きだって気持ちがまっすぐに伝わってきて、
おかしくなりそうだ。
おめえがいなくなっちまったらどうしようかと堪らなく不安になる。
土方を抱いた後にうっかり寝こけてしまって、ハッと目を覚ました。
照明はすべて消されていて、小窓から差し込む月明かりがぼんやりと室内を白く浮か
び上がらせている。
慌てて首を巡らせば、土方がすぐ隣で寝息を立てていた。無意識に土方の腰に腕を回
していたようで、腕が痺れて感覚がなくなっている。
ホッとして腕を引き抜き、顔を覗き込むと険の取れた端正な顔立ちが見えた。
(無防備な顔しやがって。)
俺の隣りで完全に緊張から解放されて眠っている土方の姿に胸がぎゅっと熱くなる。
ずっとこうして俺の腕の中に置いておけたら・・・。
そっと土方の鎖骨に指を滑らせる。
薄暗がりではっきりと見えないが、ここには俺がつけた所有印が三つあるはずだ。
ほかにも消えかけているけど、いくつもいくつも、
誰にも取られないようにつけた印がそこここに散っているはず。
首筋に顔を埋めれば、土方が寝ぼけた調子で「なんだよ」、と呟く。
「何でもねえよ」、と囁き返しながら首筋を少し強く吸った。
高杉がつけた所有印はもうない。
重ねたセックスの数はたぶん高杉のそれを超したんじゃねえかと思う。
(そろそろ無茶すんのやめねえとな。)
土方の体に負担だということがわかりつつも、高杉の跡を完全に消してしまいたくて、
土方に無理させてしまっていた。
土方、おめえには高杉のことはすっかり忘れて欲しいんだ。
捕えられて体を踏みにじられたことも巧みな罠に惑いそうになったことも
毒のような甘い囁き声も、全部。
おめえを俺とあいつの間の因縁に巻き込みたくねえ。
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