1.5W副長(第二部) 完結

□第29章 奪還 その拾一
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「やめろ!てめえ、土方に何する気だ!?」

自分の大声に息がとまるほど驚いて目が覚めた。

開いた目にこの数日で見慣れた無機質な天井が映った。

あ・・・?

跳ねる鼓動を鎮めるために深呼吸して瞬けば、天井の明るい白がくっきりと目に飛び込んで

くる。

ここは、船の部屋の中・・・か。

ほっと吐息をつく。

嫌な夢を見てた。

土方・・・。

ぶるりと身震いする。




首を曲げれば、ベッドサイドに俺がいつも着ている流水柄の着物と真選組の隊服が畳まれ

て重ねられているのが目に入る。

そういえば、俺何で、ンなとこで寝てんだ?

たしか、城に突入して、朧の野郎が出てきて・・・、

体を起こす。



ふと気づいて頬に手をやれば、大きなガーゼが顔の左半分を覆っている。

(そっか。)

朧の毒針が頬をかすったんだった。

瞬間焼かれたような痛みを感じた。

船に回収された後のことを覚えてないから、直後に毒が回って昏倒してしまったんだろう。

「かっこわり・・・。」

いきなり倒れた俺に、あいつらもびっくりしたろう。土方も。

体をもう一度布団にボスンと倒した。

でも、こうして治療されて、たぶん解毒もしてもらって、ベッドに寝かされてるってことは、

(終わったってことか・・・。)

近藤を助け出して、真選組のほかの連中とも合流して、新八や神楽やお妙も拾った。

「めでたしめでたし、だな。」

これから、真選組がどうなるのかはわからないけど、まあ、全員揃ってんだしなんとかなるだ

ろう。

異常にポジティブな近藤が先頭に立って走ってるんだし、

なんともならなそうでも土方がきっとなんとかする。

俺の方も、神楽と新八とお妙とも再会できて、なんか平和な日常を取り戻すことができるよー

な気がする。



「良かったよかった。」

もう一度呟いてみて、漠とした暗雲が心の中に沈殿しているのに気付く。

『あれから10年たつか?貴様は変わらぬな。変わらず未熟だ。』



あいつが土方を狙っている。



いつだって平和そのものだと思っていた日常に唐突に射す影がある。



むくりと身を起こした。

「土方?」

姿が見えないことに突然強い焦燥感が湧いた。



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