1.5W副長(第二部) 完結

□第23章 奪還 その伍
1ページ/3ページ


天井の節目の一つが高杉の隻眼に似ている。

桂たちからの返事を待って小さな和室でごろ寝していた銀時は、小さく目を顰め

た。


(ったく、嫌な目つきするようになりやがって。)



銀時の動揺を見て、高杉の瞳は残忍な喜色を浮かべて愉快そうに弧を描いていた。

大切にしているものを奪い取り、銀時が抉られるような苦しみにのたうつのを楽し

もうとしていた。



土方を己のものとしたうえで、銀時のことを鬼兵隊に引き取ってやってもいいだな

ど、銀時のことをいたぶり尽くす気だとしか思えない。





(・・・まあ、俺のことが憎くて仕方ねえんだから、そうもなるか。)



攘夷戦争が銀時の中で終わりを迎えた日に、血みどろになった友人に向かって吐き

捨てた言葉。

高杉は衝撃と怒りを漲らせて、一つだけになった目を震わせていた。

もう一つの眼窩に残った崩れた目玉が恨めし気に虚空を睨んでいたっけ。





銀時は小さくため息をつくと、首を捻って隣にいる土方の顔をちらりと見た。

土方は切れ長な瞳で目の前の畳を睨みつけるようにして端坐している。

すべらかな肌に血の気の薄い形のいい唇。この数日のあれこれのせいで幾分頬が削

げてしまっているけど、贔屓目じゃなくてもとてもきれいだと思う。


こんなにも普段はストイックな雰囲気を纏う男でありながら、抱かれれば驚くほど

艶やかな色をまき散らす。

武骨な男たちを一睨みで動かし、数多の攘夷浪士達を容赦なく撃破する鬼。

敵対する人間であれば、そんな男を屈服させ腕の中で思うままに乱れさせたいと歪

んだ欲望を抱いてもおかしくない。





高杉は、あれほど憎んでいる幕府の中枢と手を結び、

真選組を反逆の徒として幕府から放逐させた。

土方を手に入れるために・・・。


あいつの土方への想いの強さが垣間見える。






ずっと、高杉の渇きを癒せる奴が現れることを願っていた。



だけど、




こいつだけは譲れねえ。



たとえ、高杉が今、土方をどんなに欲しているとしても。




俺が高杉につけた傷が、どれほど深いとしても・・・。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ