1.5W副長(第二部) 完結

□第16章 崩壊 その漆
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「左腕、怪我されてるんですね。」

佐々木が撃ち放した弾丸を躱し、土方は地を転がる。

間断をおかず佐々木が土方に突きを入れてくる。

(厄介だ。)

佐々木の突きをかいくぐり、腹を蹴り飛ばして佐々木と距離を取ると土方は大きく荒

い息を吐いた。

左腕の傷がズクリと痛む。

佐々木が再び拳銃を構える。

「そんな怪我をおして闘って大丈夫なんですか?」

発砲の瞬間に弾けるように飛ぶと、佐々木に向けて落ちていた刀を投げた。

佐々木が刀を避けるために束の間できた隙に飛び込む。

胴を抜こうとした刀をもう一方の手で握った拳銃に妨げられ、土方は大きく舌打ちを

した。

「チッ!」

三天の怪物と言われるだけのことはある。

振るった刃のことごとくを受け止め瞬時に返してくる。要所要所で撃ち放してくる拳

銃に翻弄され、土方の体力はすでに限界に近い。左腕の傷が燃えるように痛んだ。



カキーンカキーン

澄んだ音が離れた場所から響く。

視線を走らせれば、沖田と今井信女が信じられないような高度な剣技を繰り出して死

闘を繰り広げている。

(総悟とあの女は互角。)

いや、若干総悟が押しているだろうか。

近藤さんを取られた怒りがあいつの力を増幅している。

(総悟は大丈夫だ。)

この場から離脱しようと思えばいつでもできる。

真選組隊士達の攻撃力も、先ほどの爆発で多くの人員と戦意を失った見廻り組を凌駕

している。



あとは、俺がこいつを振り切ればいいだけ。

それなのに・・・!



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