1.5W副長(第二部) 完結

□第14章 崩壊 その伍
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(午後5時30分。そろそろですね。)

佐々木異三郎は腕時計で時間を確認すると真選組屯所の大門を見あげた。

大門は先ほどピタリと閉ざされ、中の様子はうかがえない。

(ま、どうせ私たちと闘う準備でもしてるんでしょうけど。)

6時になれば真選組殲滅の軍勢が江戸城を出撃する手はずになっている。

(ホント、ムダなあがきなんですけどね、土方さん。)

さきほど屯所の中に転がり込んでいった3人の中に、昨日斬った監察の男の姿があっ

た。

地下牢に放り込んで放置しておいたものをどうやって連れ出してきたのか。

(まさか生きていたとは。私、土方さんに嘘言ったことになっちゃいましたね。)

あの男が生きて屯所に入ったという事は、土方の耳に江戸城内の軍勢の存在が知れた

という事。

佐々木は口元をかすかに緩めた。

門前で衝撃を受けて地に膝をついた土方の姿を思い出す。

(まったく無様ですね。この分だと、高杉さんが思ってるより早く土方は堕ちるんじ

ゃないですか。もしかしたら回りくどいことしなくても私からプレゼントとして差し

上げられるかもしれませんね。)

盲目的に付き従っていたことの結果の幕府からの手酷い裏切り。

何もかもを失って土方はどれほど幕府を恨むことか。

(あなたたちのような正義感ぶった馬鹿者どもは本当に邪魔なんです。幕府の無能と

不誠実に早く気づかせてもらって良かったと思ってくださいな。)



佐々木はゆっくり腰の刀を抜いた。

屯所の大門が動いている。

「皆さん、戦闘態勢に入ってください。そろそろ真選組の皆さんが出てきますよ。作

戦通り全員殲滅で。ただし土方十四郎のみは生け捕りの方向でお願いしますね。」

ギギギ・・・

重い音を立てて大門が開く。

正面に男が、土方が一人うっそりと立っていた。



「よお。」

目をぎらつかせながら、土方が口角をくいっとあげた。

佐々木も口角だけをあげて微笑み返す。

「どうしました?なんだか怖いお顔をされてますが?余裕失くすと色んなことが上

手くいきませんよ?」

「ふん。くだらねえ目に遭うとこういう顔になっちまうもんでな。」

「と、言いますと?」

土方が舌打ちをした。

「すっとぼけやがって。だが、まあいい。今さらだ。今回のことはてめえの方が役者

が上だったと認めてやらあ。」

佐々木の目が楽しそうに弧を描く。

「土方さんに認めて頂けたとは幸甚の至りです。私、言ったことがあるか忘れてしま

いましたが、あなたの熱烈なファンですのでね。」

土方がフンと鼻を鳴らした。

「そうかよ。じゃあせっかくだ、ひとつ頼まれてくれ。」

「どんなことでしょ?」

「幕府のジジイどもに伝えてくれや。真選組は対テロ特殊警察の任を辞し、幕府傘下

より離脱する、とな。そして、」

土方の目が光った。

「今後は独自に反幕勢力として立たせてもらう!」



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