1.5W副長(第二部) 完結

□第9章 春の雪
1ページ/25ページ

11番隊が高杉たち鬼兵隊のテロで全滅してから半月ほどが経つ。

銀時は食堂の隅で頬杖を突き、ほかの隊士の背中越しにテレビ画面を眺めていた。

春先の日の光は明るく、食堂に差し込む日差しは暖かい。

銀時のすぐ脇で土方がマヨをてんこ盛りにしたカツ丼をかき込んでいる。

折しも真選組11番隊へのテロについて言及している報道番組の最中だ。

戦慄すべきテロに対抗するために、特殊テロ対策組織はどうあるべきなのか、江戸の

市民の日ごろからの心構えは?というような当たり障りのない内容だ。

(世論って奴もすっかり落ち着いたな。)

銀時はちらりと隣に座る土方を見た。



11番隊へのテロの事実が伝わった当初の幕府の動揺は激しかった。

天導衆への恐怖に幕府は理不尽な怒りを真選組に爆発させ、近藤と土方は11番隊を

守れなかったことへの事情説明と謝罪に追われた。激しい問責の毎日だったが、土方

は考えられる限りの論法と使える限りの伝手、時にはマスコミを使って巧みに論陣を

張り真選組を責任追及の中心から次第に距離を取らせていった。



ふと気がつけば、つまるところ真選組は被害者にすぎず、11番隊に対する責任も、事

実上指揮権を有していなかった真選組本隊にはないと世間がすっかり納得していた。

しぶしぶ追認する形で幕府もこれを認めることになった。

市民に対するテロさえも躊躇わない過激派攘夷集団に対抗するためには、真選組の力

を増強するしかないという結論でどうやらこの件は終息しそうな様子をみせていた。

(まったくこいつときたら。)

銀時は小さく吐息をついた。土方はこの件に絡んで新人隊士を入れるための予算まで

も獲得していた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ