1.5W副長(第一部) 完結

□第9章  After kiss
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最低だ・・・・。

ああ

ため息をつく銀時の様子を新八が気遣わしげに見ている。



土方をミツバにそっくりな女と引き離したくて、無理やりにキスした。

あの日から2週間、俺たちの間はずっとぎくしゃくしている。

いつのまにやら、松も開けようとしているのに。



いつも、俺に対してはあからさまな感情をぶつけてくる土方が、怒鳴ったり絡んでき

たりしてこない。

挨拶代りかよと言いたくなるくらい口にしてた、バカだの死ねだのという言葉を使わない。

いつも射抜くように俺を見つめてきた視線が今は、ふいとそれてしまう。

すぐそばにいるのに、遠い。



なんで? やっぱ、男の俺にキスされたのがショックだったから?



いつものむき出しのお前に会いたいのに。

もう、素顔を俺に見せてくれねえの?



はあああああ。



特大のため息をついたら、新八が目をむいた。



「何奴!!」

天井の下の部屋の奴が怒鳴った。



「あんた、バカですか?バカなんだな?バカだろ〜!!」

新八が叫ぶ。



そういや、新八と二人天井裏に潜入して攘夷浪士たち探ってたんだっけ?


槍の穂先が天井下からぐんぐん突き上げてくるのに、新八が大げさな悲鳴を上げる。


なんか、むかつく。


人が悩んでるってのに、何これ?


ため息もついちゃいけないってんですか?コノヤロー。


銀時は、木刀を振りかざして足元の板張りを打ち壊した。

部屋の中に飛び込むとものも言わずに周囲に立っている浪士どもを木刀で殴り倒した。





「んで、全員ボコ殴りして、病院に送り込んだ・・・・と。」

「すみません・・・・。」

新八が土方に頭を下げた。

土方が眉間に手をやってため息をつく。

「無茶ばっかりしてるんじゃねえよ。探索の段階で相手、壊滅させやがって・・・。

むこうが変な武器でも持ってたら、どうするつもりだったんだ?」

「わりぃ・・・・。」

上目づかいに土方を見て、素直に謝まる。

「・・・・・これからは、気をつけろよ。報告あげとけ。」

土方にもういいと合図され、銀時たちは土方の部屋から引き上げた。




んだよ・・・。

・・・・あんな、だれにでも言うような言葉いらねえ・・・。

俺がこんなことしたら、いつもなら、瞳孔かっぴろげて、怒るじゃねえか。

真選組に迷惑かかったらどうするんだとか怒鳴るとこじゃねえの。

なのに、なんで、そんな当たり障りのない言葉しかよこさねえ?



ああああ、くそ〜!

キスなんかするんじゃなかった!

一時のテンションに身を任して失敗した・・・!

完全に避けられてるよ。

ひょっとすると、俺のことホモって思ってる・・・?!

本当は、煩悩にまみれたキスだったって気づいたのか・・・?!

どうしよう・・・。



「銀ちゃん、かなり邪魔アル。」

「天下の公道のど真ん中でしゃがみこまないでください。」

「・・・・あ?」

気が付けば、しゃがみこんだ俺を神楽と新八が心配そうに覗き込んでいた。

そういや、見廻りの最中だっけ?

「どうしたんですか?一体?年末あたりから、あんた、本当におかしいですよ?なん

か悩み事でもあるんですか?よかったら、聞きますけど・・・。」

「いや、・・・別に・・・・。」

こいつらに話したってどうなるわけでもねえし、第一話せる話でもない。

「銀ちゃんは、トシと喧嘩したアル。トシもクリスマスくらいからおかしいアル。」

「ちげえよ。あいつと喧嘩なんて、いつものことだろ。そんなんで悩むかよ。」

「でも、トシも最近、しょっちゅうため息ついてるヨ。銀ちゃんと一緒ネ。」

「・・・・。」
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