1.5W副長(第一部) 完結

□第7章  ストーカー
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土方は、週に何日か深夜に女のところに出かける。

夜中、土方の部屋から携帯の呼び出し音が聞こえる。

携帯に出た土方は二言三言話した後、落ち着いた声で必ず「わかった。すぐ行く。」と答える。

携帯の向こう側にいるのが女だという事は、漏れてくる声音でそれと知れる。

どんなに忙しいときも、銀時が知る限り断ることはない。

決まって2時間くらいで屯所に帰ってくると風呂に行き、戻るとたいていすぐ就寝する。

土方にこんな関係の女がいるとわかった時、銀時はおかしいほど動揺し、動揺している自分に更に動揺した。

そりゃ、土方くんだって健康な男の子だからね。恋人くらいいるよね。

つうか、あの顔でいない方が不自然だわ。

近藤だって、土方のこと真選組随一のモテ男っつってたじゃん。

そうか、いつもやけにクールだと思ってたら、こうやって定期的に抜いてたからか・・・。

なんて自分を納得させるためにあれこれ考えてみたら、納得はできたけど、なぜかかえって落ち込んだ。

あれ、俺、なんでこんな気持ちになるの?男として負けた感じがするから?置いてかれた感がするから?

よく理由はわからないけど、土方が出かけるたびにむかむかする。

あいつに恋人がいるなんて思っても見なかった。

立場的には、完全に第三者だったけど、あいつの初恋の人に会い、その恋の哀しい顛末を知った身としてはそう思っても仕方ないんじゃねえかと思う。

だからといって、あいつにそのストイックっつうかむしろ自虐的ともいえる主義を貫いて欲しいとはまったく思ってなかったはずなんだけど・・・。

今日も夜中、隣の部屋から土方を呼び出す電子音がする。

ピッという音がして、土方が「俺だ。」と答える声が聞こえる。

それにしても、一体、どんな女なんだよ?真選組の鬼の副長を電話一本で呼びつける女ってのは・・・。

他人の色恋、覗き見することほど無粋なことがないのは知ってる。

そもそも、他人のそういうことに全然興味なかったんだけど・・・。

気が付いたら、土方の後を気配を消して、尾行していた・・・。

なにやってんだ?!俺!

やめろ!俺!

今すぐ、帰れ〜!

数十メートル先を歩く土方の静かな後姿を情けない気持ちで見やった。

土方は、何度も辿ったであろう道を足早に歩いていく。

いつも2時間ほどで屯所に帰ってくるのだから30分くらいで着く場所なんだろう。

それにしても、と土方の進む方向を見て、銀時は首を傾げた。

このまま行けば歌舞伎町のど真ん中だ。もしかしたら、相手は玄人なのか?

その考えはなんとなく銀時の気持ちを軽くさせた。

そっか、土方くんだもんな。恋愛の相手になる女なんてそういるわけない。

ひょっとしたら、あいつ、あんまり溜めると刀の腕が落ちるとか思って、定期的に抜いてもらってるんだったりして。

くそまじめな土方がそんな風に考えているところが容易に想像できて、そんなことだったら、店に入る瞬間を捕まえて、思いっきりからかってやろうと銀時は足を早めた。
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