1.5W副長(第一部) 完結

□第5章  罠
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「おばちゃん、宇治銀時丼ね。」

「あいよ。」

「てめえ、気持ちわりいもの食ってんじゃねえよ。おばちゃん、土方スペシャル。」

「あいよ。」

「そっちの方が100万倍気持ち悪いんですけど〜。公害だよ。すでにそれ公害だろ。」

「うるせえ。てめえみてえな味覚音痴にいわれたくないわ。」

「はいよ、宇治銀時丼と土方スぺシャルできたよ。」

「「ありがとさん。」」

銀時と土方は、口をそろえて礼を言うと、ハモったことに気づき、お互い嫌そうに顔を見かわすとぷいと顔をそむけ、

でも、並んで座った。

こんなやりとりが毎朝の恒例の風景になっている今日この頃であった。

隊士たちもすっかり慣れて、生暖かい目で見守っている。

「銀ちゃん、トシ〜。おはようアル。」

「おはようございます。」

神楽と新八が食堂に入ってきた。

「あ〜、おはよ〜さん。昨日は、どうだった?」

「山崎は、ちゃんと指導してくれたか?」

入隊して以来、万事屋3人は、真選組のさまざな任務についてまわっている。

昨夜は新八と神楽が山崎について張り込みだった。

愛染党というかなり規模が大きい攘夷集団が不穏な動きをしていることを山崎が感知して、数日前から張り込みを開始している。

「眠いアル〜。」

神楽が盛大にあくびをした。

お子ちゃまにはちょっとつらい任務かもしれない。

「山崎は?」

土方が聞く。

「そのまま、張り込み続けてます。なんか、すごいんですよ。山崎さん。」

「ほお?」

地味でわかりにくいが、相当な実力を持っている監察隊隊長の技量に気付いたのかと土方が新八を見る。

「張り込みの間は、アンパンしか食べないんですって。」

「・・・・それ、どこがすごいんだよ?」

そっちか、と土方はいささかがっくりする。

「や、気合入ってるなあ、というか・・・。」

「アンパンの空き袋が足の踏み場もないくらい散らかってたアル。あいつ、もうすぐ、アンパンマンになるアル。人としては、壊れかかってたアル。」

なに教わってきたんだか。

アンパンマンに変身する方法か?

「対象はどうだったんだ?愛染党の動きはわかったのか?」

土方が呆れた顔で聞く。

「昨晩張っていた感じでは、まだこれといった動きはありませんでした。」

新八が答えた。

「アンパンは見習わなくていいから、それ以外の山崎の技術をきちんと見てくるんだぞ。」

真剣な表情で言い聞かせる。

「「はい。」」

いい返事だ。

「ふたりとも、食ったら、さっさと帰って寝てこい。寝不足続くと副長さんみたいに瞳孔あいちまうぞ。」

最後に銀時が声をかけた。

土方が銀時を睨み、新八と神楽のふたりは盛大なあくびで銀時に答えた。



朝飯をすませて新八と神楽が帰っていき、銀時たちも部屋に引き上げようとしていたところに近藤が近づいてきた。

「トシ、とっつぁんが話があるって来てる。」

「また、ろくでもねえことなんじゃねえのか?」

土方がいやそうに眉を顰める。

松平の話に真面目に付き合って、これまで何度も馬鹿らしい苦労をしてきた真選組である。

「かもしれんが・・・。会議の前に俺の部屋に来てくれんか。」

「わかった。」

仕方ねえと土方が頷く。

なんだかんだ言っても、松平は大切なパトロンだ。

「万事屋、てめえも行くぞ。」

「え、なんで?」

「松平のとっつぁんに新しい副長助勤として挨拶するんだよ。」

「松平のとっつぁん?」

「ああ、警察庁長官松平片栗虎。俺たちの後ろ盾をしてくれてるふざけたオヤジだ。」

「あ〜。」

銀時も歌舞伎町で何度か見たことがある。

阿音にキャバレーすまいるでけつの毛までむしりとられてたオヤジだ。

「あれが、真選組の後ろ盾?おめえも苦労が絶えねえなあ。」

「まったくだ。」

土方は小さくため息をついた。
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