1.5W副長(第一部) 完結

□第4章  朝稽古なんて大嫌い!
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秋も深まるこの季節、朝5時はまだ暗い。

銀時は平和にいびきをかいて眠りこけていた。

真選組の朝は、通常6時から8時までの朝稽古から始まる。

1時間の朝食の時間をはさんで朝の会議。会議が終わると各隊に分かれその日の任務に就くことになる。日勤の

場合定時は5時。食堂が朝の7時から夜の10時まで開いており、好きな時間に食事がとれるようになっている。

風呂は朝の5時から6時の清掃の時間を除けば、入りたい放題だ。

すげえじゃん、とこの話を聞いたとき銀時たち万事屋3人組は小躍りして喜んだものだ。

同時に、じゃあ俺は8時の朝飯からの参加だな、と銀時は勝手に決めていた。

昨日、土方に朝稽古に来い。と言われていたが、行くつもりはない。

剣の朝稽古は子供のころ、松陽先生のもとにいるころにもあった。銀時は、そのころからさぼりの常習者で毎日

真面目に稽古に出ているヅラにはいつも呆れられていた。

松陽先生が毎日のように隠れている銀時を捕まえて道場まで引っ張っていったものだった。

先生・・・。

甘く苦い思い出が心の中を交錯する。

ぜってえ、行かねえ。

布団の中でもぞりと一回寝返りをうった。

と、万事屋の扉がガラガラ開く音がして、

「おはようございます!」

元気のいい声がする。



新八がくるには随分早いけど・・・。
寝ぼけた頭で考える。

「あ、銀さん、やっぱり、寝てる!ほら、起きて!朝稽古に出かけますよ!あ、神楽ちゃんも起きて!」

やけにテンションが高い新八の声がした。

「うるせえよぉ、新八ぃ。いったい、何時だと思ってんだぁ?」

「何言ってんですか?今日から僕たち真選組の隊士になったんですよ!銀さん、頼み込んで入れてもらったんじ

ゃないですか!何、だらけてんですか?昨日、土方さんが6時からの朝稽古に必ずこいって言ってたの聞いてた

でしょ!」

「ああ?あれね。あれなら、いいから。」

「は?あれならいいって、何がいいんですか?何勝手に決めちゃってるんですか?こういうことは最初が肝心な

んです。初日にびしっと決めれば、そのあともうまく続くものなんですよ!」

「おまえさぁ、MHKの英会話教室、4月号と5月号ばっかやたら売れるって知ってる?9月号や10月号にな

ると山になって本屋の店頭に売れ残ってんの。あれさ、あれだよ。みんな、最初だけやる気になっちゃって、飛

ばすんだけどさ、そのあとヤムチャの如く息切れがして続かねえのな。」

「なんの話をしてるんですか?!」

「おまえがさ、最初が肝心なんて言うから、世間の常識を教えてやったんです。わかったら、銀さんのことはそ

っとしておいてください。」

「なに、言ってんですか?!僕らお金もらって真選組に入ったんですよ?!そんなわけにいくわけないでしょう

が!」

「へ、おまえらはいいよ。給料ちゃんともらえるんだもんな。俺なんて、3万円だよ、3万円。朝稽古なんかに

出てやる義理はねえよ。こういうのは、給料ちゃんともらってる人が行ってください。」

「なに、すねてるんですか!その金額でいいって言ったの銀さんでしょうが!」
「いいなんて言った覚えはねえ。あっちが、3万円しか出さねえなら、こっちもそんだけ分しか仕事しないだけ

だからぁ!」

「あんた、あれだけ、土方さんに縋って、入れておいてもらっといて、その態度ですか?だめです!ぼくは、土

方さんに銀さんを朝稽古に連れて行くって約束しちゃったんですからね!」

「はあ?なに人のこと勝手に約束しちゃってくれてるわけ?俺のことはもういいから、ほっとけよ。おまえ、う

ざいよ。」

銀時は、布団に頭までもぐりこんで、拒絶の意思表示をした。

そのとたん、ぶわっと銀時がもぐりこんでいた布団が持ち上がった。

「うざいのは、おまえある。このマダオが!男ならきちっと仕事こなせよな。いったん引き受けた仕事は全力で

するアル!」

そのまま、銀時は布団から放り出されて襖をやぶって、隣の部屋まで飛び出た。

「な、なんだよおお!!神楽まで!おまえら、いつの間に土方にてなずけられてんのお!?」

「フン。土方はお前の上司だろが。しっかり仕えるんだな。」

神楽に凄まれて、銀時は小さくなった。

(な、なんだよおお?!)
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