1.5W副長(第一部) 完結

□第3章  当然、合格だよね。え、ちがう?!
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試験の2日後、土方が万事屋にやってきた。

神妙な顔して土方の前に座る3人に向かって、

「3人とも、一応合格だ。」

と土方が試験結果を告げた。

「「「やったあ!」」」

3人一緒にガッツポーズをとる。

「なんだよなんだよ、一応って。余裕で、だろ。」

銀時がにやにやしながら、土方に絡んだ。

「い・ち・お・う・だ。おまえがな。」

「え・・・?」

「志村と神楽は普通に採用。てめえは、仮採用だ。」

「ええ〜!!何それ!!」

「あんなハイリスクでとんでもねえことカミングアウトしやがって!逮捕されないだけでもましだと思いやがれ!普通に採用されると思ってるなんてどこまで図々しいんだ?ああ゛〜?」

「なんだよお〜!!仮〜?仮ってなんなの?どういうことよ?」

「志村と神楽は通常の採用だからあの給料表に乗ってた額がまんま出る。」

「俺は?」

「てめえは、当分見習い期間だから、ひと月の報酬は、まあ、3万円てとこだな。」

「はあああ〜〜??そんな条件受けられるわけねえじゃん!!!なんのためにわざわざ真選組なんかまで出向いて試験なんてかったるいもん受けたと思ってんだよ?!金だっつたろ?金だって!ひと月3万て今時の中学生だってもらってる子はもっともらってるよ?俺に飢え死にしろって言いてえわけ?ここの家賃だって払えねえじゃん!」

「真選組に入れば、3食屯所の賄付きだ。部屋は屯所内に与えられる。てめえがあと必要なのは毎日のパフェとたまに行く酒代だけだろ?パフェが一つ500円として30日で1万5千円。飲みが一回5000円として月3回行って1万5千円。合わせて3万円だ。てめえの希望通りじゃねえか。」

しれっとして土方が言い放った。

「な、何?その超こまけえ、計算・・・。」

銀時がたじろいだ。

「お前が言った志望動機通りに計算してはじき出してやったんだ。感謝しやがれ。」

ふん、と土方が鼻をならす。

「ちょっと、土方くん・・・。」

待ってよ、ひどいよと言い募ろうと身を乗り

出そうとした、その時、

玄関の扉が勢いよく開いた。


「銀時、おまえをたぶらかす幕府の狗は、この場で俺が成敗してくれる!迷妄から目を覚ませ!」

「桂さん?!」
「ヅラ?!」
「おま・・・?!」
「桂?!!」
居合せた4人が驚愕する中に桂が剣を抜いて飛び込んできた。

「なんだあ?上等じゃねえか!!事情はよくわからねえが、飛んで火にいる夏の虫たあ、このことだ!」

土方が、くっと笑って、鞘からさっと剣を抜く。

「ちょ、ちょっと!!」

銀時は思いっきり焦る。

(な、なにこれ?モテ期到来?二人で俺のこと争ってるってこと?ちょっと!銀さん、どうしよう!)

桂がすっと足を進める。土方が合わせて間合いを取る。

(とか、ふざけてる場合じゃねえ。ヅラの奴本気だ。土方の腕じゃかなわねえ!)

桂は、普段の言動は馬鹿そのものだが、剣の腕はことによれば銀時をも凌駕する。

二人が一気に間合いを詰めた。

ガッ

銀時が二人の間に木刀を持って飛び込み、桂の真剣を木刀で受けた。

土方は、銀時が飛び込んできたことに気付いて、剣を引いたが間に合わなかった。

土方の真剣が銀時の左肩に食い込む。

「くっ。」

「銀さん!」

「銀ちゃん!」

それほど深くないはずだが、肉を切った手ごたえがする。銀時の左肩が見る間に赤く染まってくる。

「ちっ。」

土方が舌打ちをした。

「ヅラやめろ!!!」

土方を背中にして、銀時が精いっぱいの大声で桂に怒鳴る。

「銀時、貴様・・・。」
「おまえ、俺のお母さんですか?なんで、そこまで俺のやることに口出ししてくるのよ!」

「お前が道を踏み外そうとしているからだ!!」

「ちげえ!!それは、ちげえ!!」

「何が違う?」

桂の眼光は変わらず厳しい。

「それは・・・。」

言いたいことはあるが、後ろにいる土方にまで聞かせていいものか思わず口ごもる。

その時、

ガコン・・・バタ。

銀時の後ろで妙な音がして何か重いものが倒れた。

慌てて後ろを見ると、神楽がソファを振り上げていて、土方がその場にのびていた。

「え?」

「銀ちゃん、副長さんはお疲れネ。おねむになって寝てしまったネ。そこの馬鹿とゆっくり忌憚のない話をするヨロシ。」

神楽が平然とした顔で言った。

「あ・・・お、おう・・・。」

大丈夫なのか土方・・・?床に倒れた土方を見る。

だが、助かった。

桂の方にまた体を向ける。

「ヅラ、俺は別に変っちゃいねえ。今も昔もおんなじだ。」

「では、なぜ、幕府の狗と手を組もうとする?!」

桂の視線は厳しい。

「別に、幕府がどうのとか攘夷がどうのとか

関係ねえ。おめえのことだって、俺が知って

ることでおめえに不利になるようなことを真

選組にばらすつもりなんざない。」

「では、何のために真選組に入る?」
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