1.5W副長(第一部) 完結
□第2章 試験て緊張する・・・・。
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「では、これから実技試験を開始します。番号を呼ばれた人から順番に前に出てきてください。」
真選組に入隊するためには、武術の実技試験と面接があるらしい。
(どうせ、これも土方が考えたんだろ。)
銀時は13番の札をつけてだらしなく椅子に座っていた。
あのまま、翌日の今日、勢いに任せてここまで来てしまった。
(ま、とりあえず、やってみるさ。別に受からなくてもちっとも困らねえし。)
ちらりと採用の試験官の方を見る。土方が近藤の隣で、1番の番号札をつけて前に出た入隊希望の若者を見ている。
(真剣な顔しちゃって。このまえよりかは顔色ましになったか?)
なんて考えていたら、土方がこちらをちらりと見た。慌てて座りなおす。
(何、焦っちゃってんの!俺!べつに落ちたっていいんだろ?!)
(本当に来たのか・・・。)
だらけて順番を待つ万事屋の方を見たら、奴が慌てて座りなおした。
朝、入隊希望者の一覧を見た。11番「志村新八」12番「神楽」に続いて13番にあいつの名前があった。「坂田銀時」。
(そんなに金に困ってるのか・・?)
真選組に入るか?と聞いたものの、実はこないと思っていた。
来るわけがない。真選組なんて上下関係がはっきりした組織。しかも幕府直属だ。
(いやだろ、そんなとこにいるの。俺たちの下につくことになっちまうんだぞ、分かってんのか?)
誰にも束縛されない生き方がおまえの信条だったんじゃねえのか?
6番の札をつけた若者が原田に刀を落とされた。
カランという乾いた音がする。
(弱すぎる。)
ため息をつく。真選組は道場ではない。すぐにでも実戦で真剣をふるうことになるのだ。強くなるのを待っているわけにはいかない。それこそ、入隊の募集をかければ、給料の高さに惹かれて危険な仕事と知りつつも毎回10名前後の若者応募してくる。しかし、使い物になりそうなものは、毎回半分もいない。
(高望みしすぎてんのか?)
今日の1番から6番までの剣技をもう一度思い出してみる。
(いや、採用したら、犬死させるだけだ。)
攘夷浪士は次から次へとでてくるが、対テロ組織真選組は一つしかないのだ。
そして、毎回の捕り物のたびに必ず勝たなくてはならない。少なくとも負けるわけにはいかない、絶対。
強い奴が欲しい。のどから手が出るほど。
真選組は1番隊から10番隊まで10名ずつ隊を組んで、ずっと活動してきた。それが伊東の乱で40名ほど減った。今も1隊7名ほどで動いている。土方が必死でフォローしているとはいうものの限界があるというものだ。
「次、11番!」
「は、はい!」
万事屋のところのメガネが緊張した面持ちで前に出てきた。
「はじめ!」
上段にふりかぶったメガネの刀には、これまでの受験生にはない気が満ちていて、お、と思う。
打ち込み、返し、打ち込み、返される。
道場剣法の見本のようなきれいな剣筋だ。
(まだ、子供だから、力が足りねえところはあるが、これはいい。)
万事屋の方を見やると、相変わらず魚の死んだような目でぼんやりと戦う二人を見ている。
「原田が苦戦している。」
近藤さんが呟いた。体の大きさで言ったら倍くらいあるうちの強面な原田がメガネの剣技に翻弄されている。
「やばいんじゃありやせんか。あれ。」
いつの間にか総悟がそばに来ていた。大方、万事屋3人組が入隊試験を受けにきたことを嗅ぎつけたんだろう。
はっはっと息を継ぎながらも、メガネの方の剣の勢いは増している。対する原田の剣の方には混乱と焦りが見える。
「なめてたんだろ。」
「餓鬼だし、地味ですしねぃ。」
「餓鬼はお前もだろ。総悟」
総悟が肩をすくめるのと同時に、カンという高い音がして、原田の剣が空を舞った。
「次、12番、前に出て!」
万事屋のチャイナ娘が竹刀を肩に担いで出てきた。
疲労が激しい原田に代わって井上が竹刀をとって前に出る。
「んで、こいつヤっちゃっていいアルカ?」
神楽が井上の方に顎をしゃくりながら言う。
「待て。」
思わず慌てて止める。
今のヤルって“殺る”だったよな・・・。
万事屋も焦った顔でこっち見て、腕を交叉してバッテンマークを出してきている。
こんなところで、死人だしたくねえ・・・。
「俺が相手しやす。」
案の定、総悟が声をかけてきた。
「だめだ。おまえらが暴れたら、屯所が壊れる。」