五年生

□五年生の日常
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今日も五年長屋は騒がしい。

秋も終わりに近づいて、肌寒い頃
皆は何故か、ろ組に集まっていた。


「ねぇ、三郎!!
今日も下級生に僕の顔使って
変なことしたでしょ!?」


雷蔵は、眉を上に上げ
今日と言う今日はと言った様子で
三郎と面と向かった。


「何のことだかさっぱりだ。」


だが、三郎は首を傾げ憎たらしく笑う。


「もう、本当止めてよ!!
まだ10歳なんだよ!?
大人になりつつある三郎のモノ
見せちゃダメでしょ。
それに僕の顔で!!!!」


「何を言う雷蔵。
私の息子は立派な大人だ。」


「そんなんどうだっていいよ!!
もう、絶対止めてよね!!」


必死に訴える雷蔵を見て
三郎は楽しそうにする。
そして、いつもの調子で言うのだ。

「ただのお茶目だ。」

「殴るよ。」


その三郎の言葉に
直ぐさま拳を握り返事をした雷蔵を見て
三郎は血の気が引いたような顔をする。


まぁ、こんな会話
この二人には普通によくあるもので
残りの五年生は気にしていない様子だ。


それに、残りは残りで
激しい会話が繰り広げられている。


「服を着ろ!」


「断る!」


竹谷の願いを尽く断る久々知は
褌一丁の姿でいたのだった。


「勘ちゃん、ちょっと助けて!!!」


言うことを聞かない久々知のせいで
半泣きになりながら竹谷は叫んだ。


「ていうか、何で兵助は服脱いでんの?」


「豆腐の気持ちを知るためだ。」


「あ、そうなんだ〜。」


「勘ちゃん、納得しないでよ!!」


「ハチ。
豆腐の気持ちを知ることは
大切なことだぞ。
お前もやれば分かる。」


「何がわかるんだよ!!
意味わかんねぇよ!!
馬鹿なの!?
ねぇ、馬鹿なの!?」


久々知の発言に納得してしまった
勘ヱ門は泣き叫ぶ勢いの竹谷を尻目に
「風邪引くよ。」と久々知に言う。


「悪いが勘ヱ門。
豆腐が裸なら俺も裸にならなくちゃ
いけない気がして止まないんだ。」


「豆腐は裸も服もないって!!!」

竹谷の鋭いツッコミも久々知や勘ヱ門の
前では、右から左へ流れていってしまう
ようなものだった。



一方、雷蔵と三郎の二人は
夫婦喧嘩が勃発していた。


「実家に帰らせていただきます」


「まずいっ雷蔵の一言で三郎が倒れたぞ!!」



久々知を竹谷一人に任せた勘ヱ門は
横で倒れた三郎を抱えた。


「……ん!?
三郎が何か言っている!!」


ボゾボソと何か言っている三郎の
口元に勘ヱ門は耳を近づけた。


「愛の…愛の言葉を…。
雷蔵の…愛の言葉を……。」



「雷蔵!!
早く三郎に愛の言葉を!!
じゃなきゃ三郎が死んじゃうぞ!!!」


「え、えぇえ!?」


掠れた声で言う三郎の言葉を汲み取った
勘ヱ門は雷蔵に向かい、真面目に言う。
三郎のおふざけを真面目に受け取るのは
やはり、勘ヱ門らしいが
雷蔵は、悪戯を許してあげようか
このまま許さず死なせるかどうか
迷っていた。


だが、やはり優しい雷蔵は
少し経つとムスッと可愛い顔をして
三郎を許してあげるのだ。





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