体験入学 Girl
□さてと、そろそろふざけますか
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幸村の試合が終わってわずか2、3分。あたしはただぼーっとスコアボードを見つめた。
6−1
確か、【あの日】のスコアも、こんな情けない数字を示していた。
【ゲーム!越前リョーガ 6−1!】
『うぅ...』
「...じゃあな、星宮カナさん」
やっと五感が戻ってきた安心感と共に襲ってくる恥ずかしさと怒り。
そして彼の冷たい目。フルネームであたしを呼ぶ声。すべてがイライラした。
全力を出したはずだったのに、負けた。
自信満々のプライドをズタズタに踏みつぶされた。
それが悔しくて、悔しくて
悔しさが涙を吸収した。
そのおかげであたしは
『良い試合だったよ、越前君。次の対戦を楽しみにしてるから』
平然と笑顔で答える事が出来た。
出来るだけ、自然と。
彼は背を向けたまま、一瞬止まる。
けど、すぐに仲間の方へと戻る。
新しい、仲間の方へ。
「...い...おーい...聞いてんのか星宮???」
『うぐわっ!』
「...すげー声だな」
気が付けば、目の前は赤い髪で一杯だった。
『アハハハハ...そんな事より、どうしたの?なんか用?』
話し方が何となくぎこちない。
「なんか用、じゃないだろぃ!幸村君が勝ったのに、お前だけただ突っ立ってるからスゲー事になっちまったぜぃ!」
『...げ』
そうだった。
カナちゃん、現実に戻って来たぞー
『し、しまった!ちょっと考え事をしてたら、忘れた!』
「何忘れてんだよぃ!早く謝って来た方が良いぜぃ!もう真田が死んじまうぞ!」
あー、なるほど。この場合、真田が犠牲になるんだ。可哀想に、いつもこの役だよな。
良く今まで生きてきたな、真田!ちょっと見直したよ!(ちょっとね、ちょっと)
さてと、そろそろわたくしも
逝きますか、うん。
「で、理由は一体なんだったんだい?」
『えー、それはですね、ちょっと昔の事を考えていましてね、はいはい...』
「へぇ、そんなに面白い思い出だったんだ。俺の試合を忘れるくらいの。へぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぇ」
「へぇ」が長い!すごく長い!
「それがどうかしたかい?」
『あはは、今、心の声で言ったはずなのに、答えているのはスルーしよーっと!』
人生メチャクチャだぁぁぁ!
このm−、じゃなくて幸村の所為で!
『そういえば、真田は「知らない方が良いぜぃ、星宮...」...左様でござるか...』
うん、そうか...真田...すこし手遅れだったか...!
すまん!
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