SHORT DREAMS
□幸村精市の彼女の話
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『じゃあ、行くよ。最初はイチゴね』
「いいよ」
あたしはただいま、立海テニス部部長、そして彼氏でもある幸村精市ととあるゲームに挑戦する事にしました。
その名も、
ポッキーゲーム。
最初は恥ずかしかったから、とりあえず断ったんだけど、その後の精市がうるさいから、ポッキー奢ってくれたらやるって言ったの。
そしたら急に顔がぱぁって明るくなっては、鞄から数十種類のポッキーを部室のテーブルの上にバラまいた。
...こういう時の精市って、準備がいいよね。
で、早速スタンダードのイチゴでやる事にしたんだけど、
『精市、コレはドキドキしながらちょっとずつ近づくのが楽しいゲームなのに、なに思いっきりポッキーを折ってから使おうとしてんの?』
そう、気が付けばポッキーが全部3センチぐらいに折れていて、精市は嬉しそうに片方を口に咥えながら待っている。つまり、あたしがもう片方を咥えれば、もう二人の唇は0.5センチぐらいしか離れていないってこと。それの何処がドキドキするんだ。
「俺は焦らされるのが好きじゃないって事ぐらい、君なら知ってるだろ?だからこの方が手っ取り早いし、美味しいよ」
なんか、今の「おいしい」の言い方がちょっと怪しかったのは、気にしないでおこう。
『とにかく、そのポッキー却下ね。ちゃんとフルサイズでやろうよ』
あたしはため息をつきながら袋から新品のイチゴポッキーを出して、それを精市の口に宛てがう。勿論、イチゴクリームの付いていない方。
「はぁ...仕方ないな...じゃあ、目、瞑って」
『...え?』
今、なんと?
「だから、焦らすなら、ちゃ〜んと焦らさないと面白くないだろ?だから、目」
まったく、この男の思考には追いつけない。把握できない。でも、一度こういうと全然聞かない性格だから、あたしはしょうがなく目を瞑って、待機した。
「じゃあ、始めるよ」
その言葉を合図に、彼はあたしの口にチョンとイチゴクリーム側をくっつけた。
そして直ぐに自分も反対側を咥え、ポキポキと食べ始める。
精市にしては、結構ゆっくりだなぁ〜、と思いながらあたしもゆっくりとポキポキ食べ始めた。
ポキポキ
ポキポキ
ポキポキ
ポキポキ
ポキポキポキ
ポキポキポキ
ポキポキポキポキポキポキポキ
...?
随分食べているのに、なかなかお互いの唇が会わない。あたしは可笑しいなと目をちょっとだけ開いてみると、
チュ、クチュ
『ヒャッ!///』
唇に感じるはずの感触がなぜかうなじにあった。
『せ、精市?ポッキーは?!』
「フフフ、君があまりにも正直に目を閉じるから、いじわるしたくなっちゃってね♪」
あたしの前にあるはずの精市の顔が首もとからヒョイと見上げる。そして、あたしの食べていたポッキーの反対側は精市の親指と中指がそっと支えていた。実際ポッキーを食べていたのはあたしだけだという事だった。
『あれ?じゃあなんであたし以外にもポキポキ音がしてたの?』
「あぁ、それはさっきの却下されたポッキーを食べてたからだよ」
あー、なるほどね。
ホント、精市ってこういうことだけは
『準備が良いよね〜』
「フフフ、君とイチャつく準備はいつでも万全だよ」
幸村精市の彼女の話
(じゃあもう一回やろうよ☆)
(もう今日は十分トキメいたから!)