SHORT DREAMS

□生きているんだから!
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【はいはーい。これで生存者もわずか9人!皆最後まで頑張ってね!】



ブチッ。



放送はそこで切れた。



この恐ろしい放送に慣れた所為か、もうビックリもしないあたし。



慣れるって事は、ホント怖いよ。



ここまで生き残れた事さえ奇跡的なのに、誰にも会ってない事もホント凄いや。



これって、幸運なのか悪運なのか...




















これまで我が立海大からの死亡者は9人の内、5人。



誰かに殺されたか、自殺したか...



『どうして、皆殺すんだろう...』



生き残ったっていつもの生活には戻れない。



皆、一人残さず帰らなきゃ、その可能性は確実にゼロ。



なのに、生きる事に縋り付いている人が、残念ながら一人居た。



それからはもう、復習だの恨みだの、そういう理由で殺し合いをする人が生まれる。



元々60人近くいたテニス選手達が今はとうとう9人。



その一人があたしで、他に立海生3人。青学2人。氷帝1人。山吹1人。比嘉1人。合計9人。



確か立海生で残ったのは...



その時



ガサバサガサガサ!!!



『!』



誰か来た。



このゲームが始まってわずか二日。



あたしは初めて誰かと対面する事になる。



【参加者】か【不参加者】か...



その人物の正体は...



「加奈!やっと見つけたぜぃ!」



『あ、ブンちゃんだ!』



同じく立海生の丸井ブン太。



あたしが密かに想いを寄せている相手でもある。




だから好都合な再会だった


















...ハズなのに...


















カチッ


















『...え?』



「お前の殺したら、後7人。もうすぐ...帰れる...」



『ちょ、ブンちゃん何言ってんのsー』



「うるせぇ!俺は...俺はもうダメだ...こんなとこ...だからーー」



バーーーーーーーン!



『ちょ、やめてブンちゃん!マジで危ないyーー』



バーーーーーーーン!




『い、今の近!』




バーーーーーン!バーーーーン!



「クソ!動くなよ!」



バーーーン!バーーーン!バーーーン!




『う、ごくなって言われて...動かないヤツが居るかぁぁぁ!』




それでも打ち続けるブンちゃん。



どうしてこうなっちゃったんだろう?



あの明るいブンちゃんが、まるで人殺しの様な行為を...



ゴン!



『イッタァーーー!』



考え事をしていたら、思いっきり頭を木にぶつけた。



ヤバい、もう逃げられない。



「じゃあな、加奈。愛してるぜぃ」



なんかめちゃくちゃ嬉しい事を言われたけどこの状況で言われると嬉しくない。



『ハッ、こんな状況で告白なんて、相変わらず天才的ってヤツ?これじゃ逃げられないじゃん』



「ま、そんなとこだぜぃ。まさか両思いだったなんてな」



『アハハ、何過去形で言ってんの?まだあたしは愛してるけど』



「そんなの、今この場で俺がお前を終わらせるに決まってるだろぃ」



なんて皮肉な状況なんだろう。



思わずあたしは鼻で笑う。



これが学校だったら、もうちょっと嬉しかったのに。



あぁー呆れた。



あたしの人生此処で終わりですか。



覚悟を決めて目を閉じたら、予想通りの音が聞こえた。



カチッ
カチッ
カチッ




焦る様に引き金を引く音。



しかしそこに弾は無い。



「チッ、弾切れかよぃ...」



『へぇ』



「!」



油断した隙にあたしはブンちゃんを押し倒した。



勿論、鉄砲も奪い。



「俺を殺すのか?」



声がちょっと震えながら尋ねるブンちゃん。



『別に。そんな気無いから』



恐怖で満ちていた瞳が一瞬で余裕がある瞳に戻る。



「じゃあ、俺を襲うのかよ?ま、俺的には別に良いぜぃ、気持ちよくしてもらってから死ぬってのも、良いし」



『...』



「どうせもう皆死ぬんだからさ。まだ弾があったら、俺が一人で生き残るプランだったんだど」



『...』



「ハッ、もうこんな命いらnーー」




バシッ!



あたしは怒りを納める事が出来ず、思いっきりブンちゃんの顔を平手で打った



「...イッテー...」



『痛い?そうだよ、生きてるんだからそりゃ当たり前だし、今全力で平手打ったからますます当たり前。でもさ、銃で撃たれる方が痛いんだよ。ナイフで突き刺されるのはもっと痛いよ。大好きな人が目の前で死なれるのは、もっと、もっと痛いんだよ』



「...」



何が言いたいのか分かったのか、ちょっとだけ、あたしの知っているブンちゃんの表情に戻ってくれた様な気がする。罪悪感を感じているとき、目を泳がせる癖が出て来た。



『...言いたい事、分かるよね?』



「...」



『もう、やめよう?こんなの、生き残った方が一番辛いよ』



「じゃあ、つまり俺に死ね、って言ってんだな、加奈は...」



『...それは...』



あたしは戸惑った。



確かに人をこれ以上殺して欲しくない。



かと言って、それ以外、死ぬ事しか残ってない。



でも、あたしは、



『...死んで欲しくない...』



「...」



『死んで、欲しくない、けど、人も、殺して、欲しくない...』



「はぁ?じゃあどうしろって言うんだよぃ」



『...分かんない...』



「...お前なぁーー」



ビューーーーーン!



「『!』」



その瞬間、あたしの胸には矢が放たれていた。



「おい、誰だ!」



「フフフ、俺にそんな口聞いていいのかい、ブン太」



『幸...村...』



声が震えている。



「星宮さん、ブン太を殺すところだったんだよ?好きだからって、油断は禁物だよ」



あ、そっか、さっきのあの状況...他人が見たらあたしは銃を持ちながらブンちゃんを押し倒している...




まさにヤバい状況。



でも、あたし的には好都合...かな?



『幸...村、ブンちゃ...んをお...願い...』



幸村なら、きっとなんとか出来る。



あたしはそう信じてる。



だから



サヨナラ、イトシイイヒトヨ。



ブンちゃん、あたしが死んだら、泣いてくれるかな?














*BAD END*
 

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