BASARA
□朱水と涙珠(あかとあお)
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美濃・関ケ原の地にて繰り広げられた天下分け目の合戦の後
長曾我部元親は、凶王・石田三成を連れて四国・土佐の地に赴いたのであった。
「 気が落ち着くまでここに居な。何かあったら、俺を呼べ。港の方に居るからよ 」
「 …… 」
元親は船の一室へと三成を案内すると、壊された建物や船の復興の手伝いに向かった。
一方の三成は、部屋の隅にあった南蛮式の椅子に
腰掛けると、小窓からぼんやりと外を眺めた。
「 ‥‥秀吉様。半兵衛様、刑部。‥‥家康 」
三成は、自分の生き甲斐とも言えた者達の名を
ぽつりぽつりと、小声で呼ぶと、その金の瞳から涙を流した。
「 私は、もう耐えられない‥!そちらへ逝く許可を私にください…っ 」
静まり返った部屋に嗚咽する声が響いた。
「 アニキ、大丈夫何ですかい? 」
部下の1人にそう問われ、元親は眉を顰めた。
「 アァン?何がだよ? 」
「 石田さんの事ですよ。1人にさせて良かったんですか? 」
「 良いんだよ。今のアイツにゃ、必要だ。身寄りもねぇ、信頼出来る奴も……もう、この世には居ねぇんだからよ。」
元親は言いながら、三成のその心の穴を
埋められない口惜しさに顔を歪ませた。
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