BASARA

□夢と現と想い
1ページ/31ページ

1.
―それは、私の知らない過去。
けれど私はそこにいた。
血を大地に滴らせながら、私は一心に男の元へ向かっていこうとしていた。
目の前の男は、私を見て顔を伏せた。

男は、泣いていた。しかし、泣きながら私を優しく抱きしめた。
抱きしめられた瞬間に、何かが折れるような、鈍い音がした。その音と共に、
私の視界は闇に包まれた。


消えていく。 何もかもが。 私の、全てが―。



遠のいていく意識の中で、私の名前を呼ぶ声がした。


「 三成 」


―ふと目を開くと、そこは見慣れた部屋の天井だった。
女子高生である石田三成は、いつものようにベッドから起き上がると、
台所へ向かい、コップにお茶を注いだ。

(またあの夢をみた。‥‥嫌な夢だな)

そう思いながら三成はお茶を飲み干し、コップをテーブルの上に置くと
クローッゼットへ向かい、制服に着替え始めた。
すると、

『 ピーンポーン♪ 』

インターホンの音が部屋中に響き渡った。
三成は急いで着替え、玄関のドアノブに手を掛けた。
するとそこにいたのは、


「 おはよう!三成! 」

そこにいたのは、幼馴染みの徳川家康だった。
三成は、家康の顔を見るやいなや、勢いよくドアを閉めた。

「 ちょっ三成!なんで閉めるんだ!開けてくれっおぉい 三成!? 」

と、大声で喚く‥‥叫ぶ家康をよそに
三成はドアの鍵を閉め、弁当を作り出した。
窓の隙間から漏れる料理の匂いを嗅いだのか、家康は再びシャウトした。

「 弁当作ってる暇ないだろ!?あと5分で家出ないと遅刻するぞ!? 」

三成は無言無表情のまま、料理を続けた。


結局、2人は遅刻ギリギリで学校についた。
クラスが別々の2人は、廊下の途中で別れた。

「 じゃあ、またあとでな。三成 」

「 ‥‥‥ 」

家康にそう言われると、三成は「フン」と鼻を鳴らして
教室に入って行った。それを見て、家康は
クスリと微笑した。
( 相変わらず素直じゃないなぁ、三成は )
そう思いながら、家康は自分の教室へ向かって行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ