Avenir-みらい-

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見知らぬ世界から突然現れた人間を、快くギルドの一員として迎え入れてくれて、『仲間』と呼んでくれて…とても心が温かくなった

しかし、そんな和やかな空気の中、何か気配を感じ取ったのは、ユーリの足元で俯せになっていたラピードであった

ピンっと張った耳がピクリと動く










「ウゥ〜…」

「どうしたラピード?」

「気をつけて、何か来る」










ジュディスも異様な何かを感じたらしく、手元にあった槍を持って低く構える

それを見て他の仲間もそれぞれの武器を持つ










「紗紅、俺の後ろにいろ」

「う…うん」










紗紅の前にユーリが立ち、剣を構える

滞在していた宿の部屋の扉が突然バンっと開いた










その先には、白いスーツを着た男達が立ち並んでいた

…ザッと30人はいるだろう










「なんだよアンタ等。人が休んでる部屋にノックもなしに入ってくるなんて、常識知らずだな」

「…『月光石』を持つ娘がいるはずだ」

「………!!?
(月光石を知ってる!? なんで!!?)」










この月光石のペンダントは幼なじみから貰った大事なモノ

しかしその月光石は、この世界だけに存在するはずの魔核だと分かった

しかも突然現れた集団が月光石を知っている

…このペンダントは一体何なの…?










「そんなの知らねぇな」

「隠しても無駄だ。命が惜しければ、いち早く『月光石』とその所持者をこちらに引き渡してもらおう」

「…やるしかなさそうよ〜青年」

「……らしいな」










その瞬間、白いスーツの集団が襲い掛かかる










「ユーリは紗紅を!! 残りはあたし達でやるわ!!」

「よし、任せたぜリタ!!」

「みんな…ッ」

「んな顔すんなって。俺達はギルド『凛々の明星』だぜ?お前は、俺達が守ってやる」

「ユーリ……」

「紗紅には、指一本も触れさせねぇ!!」















…☆…















「三散華!」

「Σぐはぁッ!?」










数分後、ユーリ達は白いスーツを着た男達を全滅させた










「余裕だな」

「大丈夫、ユーリ?? 怪我とかしてない?」

「それはこっちの台詞だ。なんとも…なさそうだな」

「あたしは全然平気!! みんなが守ってくれたから…ありがと、ユーリ」

「あぁ、他の奴らにも礼言っとけよ」










ユーリはそう言うと紗紅の頭にポンっと手を軽く置いた

温かくて大きな手…思わず胸がドキリとなる

……ただ単にあたしが子供扱いされただけなのかもしれないが

だが、異変はその時に生じた

どこからもなく、冬のような冷たい風が吹く









「Σな…なんなのよ!??」

「一体、どこから??……Σみんな、窓見てください!!」

「窓?」










一斉に振り向くと、窓の淵に一人の男が座っていた

肩まで襟足が伸びている髪、くっきりとした
顔立ちである

このような顔を『美形』というのだろう










「あーあ、酷いじゃない。あたしの可愛い部下達をこんなボロボロにするなんて」

「あんちゃん、何者? 窓から無言で入ってくるなんて、フツーじゃないわよね?」










レイヴンが聞くと、男はスッとお辞儀をする









「初めまして…月雅一族四神官、氷塵のリド。よろしく」

「げつ…が?何よそれ」

「『月雅一族…女神ルミナスを宗家としていた古い家柄。数百年前に滅んだと云われている』です」










城にある本を読んだのか、エステルが淡々と説明した

それを聞いていたリドは、ふんッと鼻をならす










「その説明、ちょっと違うわ」










そう言うと.リドは淡々と語りはじめる














女神 亡き者となり

瀕死の月雅の民

新月に仕えし者 月雅四神官

己の意 次世代に受け渡す



生まれ変わりし新たな四神官

ルミナス復活を願い待つ



そして黒き月の夜

女神の意 力 受け継ぎし者

漆黒の空より現るだろう





















「そう、貴女の事よ。黒崎 紗紅さんvV」









…………………はい?

このオカマっぽい人、何を言っているの?

あたしが、神の生まれ変わり??

んな事、ある訳ないない((笑










「紗紅がルミナスの生まれ変わりっていう証拠がないじゃん!! 勝手なこと言わないでよ!」










カロルがリドに向かって叫ぶ

だが、叫ばれた本人は平然に受け答える










「証拠ならあるわよ」

「一体どこにその証拠があるのかしら?」

「紗紅が付けている『月光石』のペンダント」

「これが?だってこれは…」










――アイツから貰った、ただのペンダント










「普段はただのエメラルドグリーンの石。だけど、ルミナスの生まれ変わりの君が所持していると…あたしのこの聖印と同じ模様が浮かぶのよ」

「聖印…?」










リドを見ると、左脇腹に蒼い聖印があった

慌てて自分が首から下げているペンダントに目を移す

すると、リドの蒼い聖印と同じものが刻まれていた










「Σ!!? 嘘………」

「これで分かったでしょう? 紗紅、一緒に来てもらうわ」










リドは紗紅に自らの青白い手を向けた

――ッ!!! 嫌!!

だが、目の前でピタッと迫ってきていた手が止まった

紗紅の頭上から、ユーリが持つ剣先がリドの目の前に突き付けている

また、リドの後頭部にはジュディスの槍が突き付けられている










「ラスカだか何だかは興味がねぇ。…だが、大事な仲間に手ぇ出すようじゃあ見てられないな」

「それに…女の子に相手に、怖がるような誘い方って男性としてはどうなのかしら?」










リドはポカーンと二人の言葉を聞いた後、にやあッと不敵な笑みを浮かべながら空いている方の手でパチンっと指を鳴らす

すると、リドの周りから吹雪のような突風が現れ、紗紅以外のメンバーは吹き飛ばされた










「Σなッ!?」

「Σきゃあッ!!!!!」

「…このあたしに刃先を向けるから、こうなるのよ。貴方たちは見た目だけなら、あたしのコレクションにしてもいいと思ったのだけれど、心が醜い。…残念だけれど、醜いものは嫌いなのよ。ここで死んでもらうわ」










そう言うと、ゆっくりとした足取りで、壁にもたれ掛かっているユーリのところに向かう

ユーリは剣で自分の体を支えにして、膝立ちするのがやっとの状態である

それくらい強力な魔術であった










「くっ…」

「さようなら…青年さん♪」

「――ユーリっ」










目の前でユーリがやられてしまうと思った瞬間、頭が真っ白になった

――……ッだめ!!!










「……貴女まで殺す気はないのよ。そこをどきなさい、紗紅」

「…………………嫌」

「俺達はいいから、早く逃げろ!!」










白いスーツの男が持っていた大剣を拾って、ユーリの前に立っている自分がいた

両手で持っている大剣はカタカタと震えていた










「もう一度だけ言うわよ…命が惜しければ、どきなさい」

「嫌って言ったらイヤ!! あたしは、貴方達のところになんて行く気なんて更々ないわ!! あたしは…あたしはギルド『凛々の明星』の一員よ!!」

「紗紅…」

「…そう。なら、瀕死状態まで追い込んで連れていくしかないわね。貴女は傷を付けたくなくないのだけれど…仕方ない」








すると、再び手を挙げて紗紅の前へ突き出す

――ヤバい!! 誰かッ!!

その時だ

紗紅のペンダントから光が溢れ出してくる










「Σなにッ!!?」

「き…急に光出して…――」



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