Iris
□第1章 << 迷宮アモン編 >>
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六歳のある日から、俺の生活は一変した
スラムで暮らしから、王族での暮らしへ
正直、辛かった
俺は『スラムから来た汚いガキ』
そんな俺を見る王宮の奴らの目、それはすげぇ冷たい
俺は………孤独だった
そんなある日、こんな俺に話しかけてきた一人の女の子がいた
俺と似たり寄ったりの歳だろう
「…貴方が、アリババ君?」
「あ、あぁ‥‥。そうだけど」
「誕生日、いつだかわかる?」
「え…っ」
歳は知ってたけど、誕生日は知らなかった
答えることができず、俯いてしまった
「………。じゃあ、アリババ君の誕生日は、今日ね!」
「‥‥‥‥‥‥は?」
ポカンと呆気にとられる
すると、女の子はニコニコして近づいてきた
「そうしたら…あたしの三ヶ月早い、お兄様になるね」
「『お兄様』?……君は一体…」
女の子は綺麗な白い頬を桜色に染めながら、手を差し延べて、微笑んだ
その微笑んだ、君の顔は…今でも覚えている
なんでだろう………
「挨拶が遅れてごめんなさい。あたしは、バルバッド国 第一王女 シェリル・サルージャ。よろしくね、アリババお兄様!!」
…☆…
「……ん、」
なんだか、懐かしい夢を見たなぁ
俺がコイツと出会った時の‥‥
そんなことを思い、隣でまだスヤスヤと規則正しく呼吸して眠っているシェリル
俺の大切な‥‥家族
はっきりとした血の繋がりではない、誕生日も三ヶ月しか変わらない『兄』と『妹』の関係
‥‥そういえば、コイツに誕生日を勝手に決められたんだっけか 笑
当日、孤独だった俺に唯一イヤな顔をすることなく、ニコニコと笑顔で接してきてくれた
そのおかげで、どれだけ自分が救われたことか
だから、今は俺がコイツを守る番だ
俺が原因で、バルバッド国を出てチーシャンでそれぞれ働いて生活をしていた
俺は荷車の運転手、シェリルは踊り子
シェリルまでが、このような状況になる必要はなかった
なのに――‥‥
「‥‥アリバ…バ…」
「?」
名前を呼ばれて隣へ視線を移した
変わらず彼女は眠ったままで、寝返りをうち、こちらに寝顔を向けていた
「…たく、ガキかっての」
そっと撫でて、彼女が起きないように立ち上がり部屋を出て、仕事へ向かった
この時は、不思議な少年に会うなんて‥‥思っていなかった