Avenir-みらい-

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ピンチな状態の時に急に光り出した、あたしのペンダント

ペンダントが光出したと同時に、頭の中に誰かの声が聞こえてくる

綺麗で透き通っている…女性の声

そして、剣を振り下ろしながら、その女性の言葉を聞き返すように繰り返す










「光翔…翼??」










すると、振り下ろした剣の後を追うように、凄まじい光線がリドに降り注ぐ

リドもまさか攻撃してくるとは思わなかったのだろう

防御の体制を取れなかったため、身体に傷を負わせることができた










「Σゔッ…!! くっ…」










苦しそうに声を出して、傷口を抑えながら片膝をつく

すると、どこからもなく声が聞こえる










「………もういい。さがれリド」










すると、光と共に人が現れた

仮面を付けた、謎の男の子










「…申し訳ございません、月雅様」

「仕方がない、力が…覚醒したんだろ」










そういうと、仮面の男の子 ――『月雅』と言うらしい―― は、紗紅の顔を見る





‥‥なんだろ、この人。なんだか、知ってる気がする

すると、月雅は一言










「‥‥元気そうだな、紗紅」

「‥‥‥‥えっ‥」










先ほどの指示を出していた凛々しい声ではなく、穏やかで優しい‥‥

しかも、あたしの名前‥‥





「貴方は誰?? なんであたしを知ってるの?」










そう尋ねようとしたら、月雅によってそれを遮られた










「今回は、これで失礼する。いずれ、近々また会うだろう」

「てめっ……待ちやがれ!!」










ユーリの言葉も虚しく、月雅とリド、その部下達は、月雅が現れた時と同様に、光輝く中に消えていった

辺りは、しーんと静まり返る

それもそうだ

この短時間でいろいろと起こりすぎた










「〜〜っ…」










紗紅はその場にぺたんと腰が抜ける

後ろにいたユーリは、すぐさま駆け寄る










「…たく、無茶しやがって」

「ご、ごめん…」

「何が起きたのかは置いといて、お前のおかげで助かった。ありがとな」

「――…!! うん」










ユーリからの礼が嬉しいく思っているのも束の間、ユーリが辛そうな表示になり、その場に膝をつく

紗紅は慌ててユーリに目線を合わせる









「大丈夫!!? どっか痛い!!?」

「…平気だ、大したことねぇよ」

「大したことあるよ!! カロル、グミ持ってなたり…」

「んな勿体ないことしなくても、すぐに治るって」










本人はああ言うが、実際は結構な深傷であった

どうしようと部屋の中をキョロキョロと見渡す

しかし他のメンバーは、先程のリドの攻撃で皆が気絶していた










「……どうしよう」





――誰か……っ










その時だった

また、あの女性の声が頭の中で聞こえてくる















――貴女は誰??
  なんでいろいろと教えてくれるの??


『私の事はまた今度。さぁ、仲間を助けたいのでしょう?』


――助けたいけど、今のあたしには何も…


『私の後に続けて術名を言えば、術が発動するから』

――あたし、術なんて使えないんですけど。

『さっきだって剣技使えたでしょう?』

――でも…っ










無理だ…と言おうとしたが、女性があたしの言葉を遮った










『大丈夫。私を信じて』

――……………。
 (悪い人じゃなさそうだけど…)










他に頼りになるモノがない、だったら………

そうして、力強く頷く










――分かった。貴女を信じる










女性にそう伝えると、彼女はニコッと微笑んだ










『ありがとう、信じてくれて。じゃあ、早速教えるわね。私の後に続けて…………』




















「…キュア!」










あたしは、思い切って術名を発した

その術…キュアは弟のプレイしていたゲームで知っており、体力を大幅に回復する技であった

…今さらだが、こんなレベル高い術を、異世界かつ一般人のあたしが使えるものなのだろうか?










「…………………。」

「ユ、ユーリ……?」

「治って…る」

「Σえぇッ!? 嘘でしょ!?」

「ンな時に嘘なんかつかねぇっての」










ほらッと言われて腕を見せられる

先ほどまであったハズの切り傷が完全に塞がっており、しかも体力も大半戻っているようであった










「……マジで?」

「マジで。…て訳で、他の奴らも治してやろうぜ?」

「あっ…うん!!」










今日1日で、なんだかいろいろとありすぎた

考えたい事がいっぱいあるのだが、今はエステル達を治療することに専念しよう

『大丈夫。私を信じて』

あの女の人は、一体誰だったのだろう?















…☆…















全員に治癒術が行き渡り終わったと思った瞬間、ガクッと足の力が抜けた










「……ん??」

「どうした??」

「なんだか足に力が入んなくて…」










あはは…と笑いながら手を頭の後ろにおきながら答えた










「なんだか、緊張してたみたい。情けないな〜…」

「急に、剣技とか治癒術使ったからじゃねぇか?体に負担だったんじゃ…」

「負担〜?そんなの全然かかって、な…」










そう言って立ち上がろうとしたが…へにゃんと呆気なく崩れ落ちた

そんな彼女を見てフッと微笑みかける










「こんなところで強がったって、何にもいい事ないぞ?」

「つ、強がってなんか…」

「ほら、掴まれ」

「あ、ありがと‥‥」










あたしは、ユーリの言葉に甘えて手を取って近くのソファーに腰をかけ、ふぅ…っと息をついた

確かに、いきなり術を使いすぎて、もうクタクタだった

すると、ユーリは様々なグミが入っている袋を持ってきた










「一つ食っとけ」

「で、でも勿体な…」

「今日の頑張ったで賞って事で。何がいい?」










『頑張ったで賞』って…

思わずクスッと笑ってしまった









「…じゃあ、アップルグミ」

「レモングミとかもあっけど?」

「ううん、アップルがいいの」

「……そか」










酸っぱいモノはチョッと…苦手なもんで

渡されたグミを口に含む

甘くて、不思議と元気が出てくる

ホントに…回復するんだ










「美味しい…」

「そうか」










なんだろ…安心したからかな?

眠くなってきた…

そんな様子にも気づかず、ユーリが話し掛ける










「そういえば紗紅、お前は異世界から来たのに、なんで術が使、え…」










言葉の途中で、右肩に何かの重さが加わった


静かな寝息をたて、自分に頭を預けている彼女の姿がすぐ隣にあった

そこにあったのは、先程までのどこか凛々しかった紗紅ではなく、まだ幼さが残る16歳の少女の寝顔だった










「ったく、変な奴」










そういって、その体制のままユーリも目を閉じたのだった



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