旅団

□月夜のワルツ
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チリー…ン

廃墟の並ぶ薄暗い夜道
静寂の中に響く鈴の音と…殺しきれていない足音

『やば…囲まれたぁ』

孤独に輝く月を見上げながら一人の少女は呟いた


………


ー数時間前ー

仕事を終えて帰ってきたレイチェルは"じゃんけん"で負けたために宴会用のお酒を取ってくるように命令された

『いーやーだ! なんで、自分でいけばいいじゃん!』

「お前が、負けたからだ」

『えー、今仕事から帰ってきたんだよ?』

「知ってる」

『……チッ』

唯一団長の命令に面と向かって我が儘を言えるレイチェルと、毎回それに困らせられる団長

しかし 我が儘を言うものの命令に一番忠実に従うのもレイチェルだ

『…どれだけの量を盗って来ればいいの?』

「店にあるだけ…だ」

『は?それを一人で持てと?てか、店って目立つじゃん トラック ラチればいいじゃん!』

「それだと種類があまりないだろ 」

……


幻影旅団 欲のままに生きるもの
その団長とあれば その欲望はかりしれない

そのまま文句も言う気になれずだまって出ていった

その後迷うことなく良さそうな酒屋をねらい 大きなケースにつめ担ぎ上げた

流石に店のすべての酒を担ぐのは無理だったので良さそうなケースに乱暴に酒を詰めた

とは言ってもそのケースも彼女の身長くらいあるものだか…


「重っ」とは言いつつも 容易に担ぎ上げ店を後にした


早く帰ろうと足早に廃墟の並ぶ裏道に入ったところで数十人の気配に気づく

そこそこの能力者だろうか
絶を使っているために細かい居場所まではわからない...が確実に囲まれていた

はぁ、と ため息をつき
担いでいた物を下ろすと その重さを表すように鈍い音が響く

『ねー、出てきなよ
盗んだお店の人?それとも私に恨みのある人? 』

少々だるそうに暗闇に問いかけるが自分の声が闇にとけるだけだった
しかし、油断していたのか 気づかれたことに動揺を隠せずに数名のオーラがゆらいだ

『!?ぃって』

刺激を感じ首に手を当てると針のようなものが刺さっていた
針先からは液が垂れている

(毒かな..)

『…あーあ、団長に怒られるじゃん
こんなの私に効くと思ってるの?……もういいや』

ユラリと彼女のオーラが変わる
なにかが はまる音が自分のなかで響く
そして女は動き出した
その息の根を止めに

数で攻撃してくればレイチェルに軽い傷くらいは与えられたかもしれない
しかし、そうすることがなかったことからアジト…つまり、目的は"蜘蛛"だと判断した

それが相手に死を与えた

(ワタシのカゾクにテをださないで)



!?

針を飛ばしてきた男の首を掴む

『大丈夫だよ、一瞬だから』

回りにいた人間が悲鳴をあげる

無理もない
先程まで影から行動を伺っていた少女かいつの間にか自分の目の前で人を殺している
しかも、刃物などを持つわけでもなく 殴るわけでもなく触っただけで生きていた自分の仲間が次々に泡を吐いて倒れていくから…

まるで子どもが踊るような 軽やかな足どりて
お菓子もらった子のように笑みをこぼし
彼女の舞いに心を奪われたかのように倒れていく人…ヒト












ふぅ、

数分間の舞台は幕を閉じた
彼女の後ろには心を射ぬかれた人の山…

先程までの笑みは嘘のように何も映らない瞳

『んぁ!?』

突然 目を覆われて聞き覚えのある声と匂いにより我に返る

「…遅すぎるよ」

『ごめんなさい。』

「待ちくたびれたね」

『……』

早く帰るよっと言うかのようにお酒の入ったケースを軽々と持ち上げて三日月の目はこちらを見る


フェイタンはずっと戦闘中のレイチェル見ていた
もちろん そのあとの表情も


普段の五月蝿いくらいの笑顔が朽ち果てた顔なんて見たくない
そんな気持ちになんて気づかないがフェイタンの体は動いていた

そして
パッと咲いた笑顔になぜか安堵した

(お前から笑顔を消すのはワタシだけね)


アジトに帰ったあとも彼女は笑顔だった
五月蝿く構ってくるのも悪くないと ほんの少しだけ感じたフェイタンでした
 

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