神様の箱舟

□序章[最初ノ人間]
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hiro「わかります!まっさに、その通りですよね〜!!」

カミサマ『おおっ、hiroさん分かってくれるか!(≧▽≦)』

とあるインターネットのチャット室。
ソコでは[カミサマ]と[hiro]と言うハンドルネームの二人が、パソコンを通じて会話をしていた。

因みに[hiro]は俺の事だ。
ちょっとした暇潰しに、自室のノートパソコンでネットサーフィンをしてると、とある掲示板にスレが建っていた。

『今日×時にチャット会を開きます!!世界に疲れた、暇な人間は来てね(o>ω<)

URLは、http://……』


普段なら、スルーするようなスレだったのだが、URLが貼り付けられたそのスレに俺はなんとなく興味を持った。
たぶん、あの一文に俺の目が釘付けになったからだ。
-世界に疲れた、暇な人間-

まるで俺の事を言ってるように思った。
……俺は、この世界があまり好きじゃない。「人類みな家族」だなんて誰かが言ってたが、あんなのは良くてうわべだけ。俺からしてみれば、「人類みな‘他人’」だ。そう、きっと本当の家族でさえ……
だからこの世界には、人を蔑み、憎み、妬み、傷付ける奴らがいるんじゃないか。人を人とも思わない、そんな奴らだっているだろう?
その事を悪びれる事すらしないんだ。反省も後悔もせず、罪だけを他人に押し付ける。
罪に気付かないふりして、無視する奴だっている。そして何より、俺も、そんな奴らの一人になるのが苛立たしいのだ。
……俺も−−と、何ら変わりないことが………。


……だから俺は、そんな人類がいるこの世界にウンザリしてたんだ。

それで、そのチャットへのリンクをクリックすると、黒と白と灰色ぐらいしか配色がない、このシンプルなチャットルームへとやって来たのだ。

で、現在。俺は、あのスレを立てた本人だろうと思われるハンドルネーム“カミサマ”とチャット内で会話している。

カミサマ『しっかし、意外だったよー☆(ゝω・´)』
カミサマ『我はてっきりhiroさんは、愚痴の1つも言わない真面目くんかと思ってたからさ(=`ェ´=)
正直、共感すらしてくれないかと思ったよ。』

hiro「そんなことないっすよww
俺は、そんないい人ぶれる程の人間じゃないです!」

カミサマ『ほー、まさかhiroさんが、腹黒ボーイだったとは!( ^m^)ムフフ』

hiro「なっ、違いますよ!そこまでひどくないですってば(汗)」


しかし、このカミサマ。
先程から会話しているが、どうにも性格(キャラ)が掴めない。
掲示板のスレでも、可愛らしい顔文字を使っていたから、てっきり女の子かと思ったのだが、‘我’と言う一人称や、よく使われてる記号や顔文字のせいで、男か女なのかすらわからない。

世界に疲れた、人にウンザリしている繋がりで、話は会うのだが……。
この謎すぎるキャラ設定が原因で、信頼に欠けるというか……どうしても彼が胡散臭く見えてしまう。
まあ、悪いやつではないと思うが(汗)


カミサマ『んー。返事がこないなー?hiroさん寝ちゃったー(´・ω・`)』
カミサマ『お兄さんが子守唄でも唄ってやろうかー?』


ふとカミサマからそんなコメントが書き込まれているのを見て、慌てて俺もコメントを返した。


hiro「寝てませんよ!ちゃんと起きてましたって(汗)」
hiro「と言うか、カミサマって男だったんですか?」

カミサマ『おっと、ふふーそれはどうだろうねー(´ω`*)』

なぜか俺の質問は、呆気なく流されてしまった。
なんでだ。性別すらも、あまり知られたくないのだろうか?
しかし畜生。可愛い女の子かなとか期待した俺がバカだったよ……。

カミサマ『何せ我は神様だからな♪』

……は?
カミサマからの返信に俺はピタリと、キーボードを叩いてた手を止める。あ、もしかしてギャグか。かなりつまらないが、親父ギャグかなにかか?


hiro「ハンドルネームのカミサマと、神様をかけたんですか?」

カミサマ『ちょっwwいくらなんでもそれはつまらないだろうヾ(≧∇≦;)』
カミサマ『そうじゃなくて、我は本当に‘神’なんだ。
正真正銘のな☆』


はい?
あー、つまり、カミサマってのはあれか。いわゆる厨二病ってやつか?


hiro「痛いっすねー。病院に行くことをおすすめしますよ。」

カミサマ『ちょ、病人扱い!?本当に神様なんだって!もっと我を信じてよー(・ε・` )』

hiro「重度の厨二病を患ってる人に、信じれと言われましても……(汗)」

カミサマ『厨二病じゃないってばー(´Д`)いま君は世界を創造した本物の神様と会話してるんだよ!こんなにレアな体験は中々無いモンだよ!?』

ネット内の厨二さんと会話する事は、それほどレアじゃないと思います。
と、俺は心の中だけでそうツッコミを返し、コメントを打つ。


hiro「自分が神様だなんて設定は、正直無理がありすぎだと思いますけど?」

カミサマ『だから設定とかじゃなくて、本当に我は神様なの!全く、神への信仰がなってないな君はー…(-_-;)』

hiro「そんな信仰。無くて結構です!」


てか、なんでこんなに神様にこだわってるんだよ?ハンドルネームがカミサマだから……て理由だけじゃねーのか?
しかし、さっき以上にカミサマの事が分からなくなってきた。カミサマってこんなにうざい感じだったっけ?
俺は一旦、パソコンから目を反らして椅子の背もたれに身体を預ける。少し昂った気持ちを落ち着かせるため、一時の間だけまぶたを閉じた。

なにが神様だ。世界を創っただ。そんなことあるか。
だいたい、
神様なんて居るわけないだろ。


気持ちをそれなりに落ち着かせた俺は、重たいまぶたを開け、パソコン画面を見た。

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