短編集

□鬼ごっこ
1ページ/10ページ


おーにごっこする者この指止ーまれ…

鬼ごっこで、勝つのはどっち?

























****


「なぁ、鬼ごっこやろうぜ!!」

突然、早坂涼馬(ハヤサカリョウマ)がそんな事を言い出した。

とある小学校。
三階の5年1組の教室。
今は放課後、時間はちょうど午後4時。
ほとんどの生徒が家に帰る支度をして、学校を出る者ばっかりだったそんな中、5年1組のムードメーカー的存在である彼に、そう呼びかけられたのだ。


「鬼ごっこ?涼チャン元気だね〜。昼休みドッジしてたじゃん!?疲れてないの?」

「涼馬は遊び盛りなんだよ。」


そんな涼馬に反応して寄ってきたのは、二人のクラスメイト。
一人は、彼を「涼チャン」と言うあだ名で呼ぶ女の子。明るい事が取り柄の涼馬の幼なじみ。平居杏(ヒライアンズ)、通称[杏]。
そしてもう一人は、
黒ぶちの眼鏡を掛けており、5年1組の優等生でクラス委員長の男の子。何処かクールな雰囲気を持つ藤崎清史(フジサキセイジ)、通称[フジ]だった。
涼馬と出席番号が近い事もあるからか、二人はよく涼馬とも仲が良く、絡むことが多かった。


「何だよフジ。冷たいなぁ、オレはそんな子に育てた覚えは有りません!!」

涼馬はそう言って、フジの肩に手をまわす。


「別に僕、涼馬の子供じゃないし。あと手ぇ邪魔。」

しかしフジはペシンッと、涼馬の手を叩いて払いのけた。


「なっ、そんな…っ。杏ーっ!!フジがヒドイよー!?」

「あー、ハイハイ。涼チャン可哀想だね〜。」←棒読み

フジの冷たい一言に涼馬は傷付いたと言いたげな表情を見せ、杏はそんな涼馬の頭を撫でた。
このパターンはもう毎度のことで、もはやお約束のような物である。


「あっ、何だよ涼馬、またイチャイチャしてんのー?」

「バカップル〜♪」



そう言って茶々を入れてきたのは、クラスで1番身長の高い山田夏穂(ヤマダナツホ)、通称[ナツ]。女みたいな名前だがれきっとした男子。そして1番体重の重い河口健祐(カワグチケンスケ)、通称[健]。真ん丸な体格の通り、クラスで1番よく食う男子。そんな二人の縦横コンビだった。

幼なじみの事もあってか、涼馬と杏は回りから付き合ってると思われ、噂の的にされる事が多い。
しかし本人達にとってはただの幼なじみの友人なだけで、別に恋愛意識にだとかは全くしてなかった。


「あのねぇ、ウチと涼チャンは家が近所の幼なじみなだけなの!!カップルじゃないって、何度言えばわかんのよバカ縦横コンビ!?」

「まぁ別にいいじゃん?そんな事より、ナツと健も鬼ごっこやろうぜ!!」


否定する杏を余所に、お気楽に二人も遊びに誘う涼馬。
今、頭の中に“遊”の字しか浮かんでいない彼は、本当の[バカ]と言っても過言ではないだろう。



「鬼ごっこ?まぁ、俺ら暇だから別にいいけど…。」

「ちょっと待て、“も”ってまさか、僕も入ってるんじゃないだろうな?」

「なに言ってんだよフジ。当たり前じゃん!!

「はぁ!?ふざけんな!!僕は今日塾が……」

「あっ!!斉藤ーっ!!鬼ごっこやんねー!?」

って聞けよっ!!?



完全に頭が“遊びモード”の涼馬は、フジの言葉に少しも耳を傾けてくれず、結局涼馬の鬼ごっこに付き合うこととなるフジでした(哀)



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ