コンテスト応募用作品

□女好き♂vs女好き♀*休み時間の激闘*
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秋葉ノ原学園
二年、成瀬優斗。
同じく二年、白鹿雅。
この二人は[女の子好き同盟]を結ぶ程女の子が好きである。その共通点のおかげか仲も良い。

だが…
そんな二人が絶対に敵対する時がある。



カチカチ…

あと三分。

カチカチ…

あと一分。

カチッ
キーンコーンカーンコーン…
今だ!
授業が終わる号令が言われたと同時に、成瀬は教室を飛び出した。先生の注意など無視して廊下を走る。彼には目的があるのだ。

今日こそ!今日こそイケる!!

成瀬は廊下の曲がり角に来たその時…

「甘いっ。」

ふわり
成瀬は宙を飛んだ。否、投げ飛ばされたのだ。

ドシッ

「ぐっ…」

背中を打ち激痛が走る。成瀬が見上げる先には、色っぽく制服を着こなした少女。白鹿雅の姿があった。

「残念ね優斗〜♪今日も君の企みは失敗だ。」
「くっ、邪魔をするな雅!俺は今日こそ…」

成瀬は痛む背中をおさえながらゆっくりと立ち、先に進もうとした。

「そうはさせないよ。」

が、白鹿は彼の前に立ち塞がる。

「どけ雅!俺は今日こそ覗くんだ…夢の“女子更衣室”に!!」

そう、成瀬の目的。それは体育の授業前の女子更衣室。女の子の着替えを覗く事だった!

「女子更衣室!男のロマン!女の子達だけの秘密の花園!なのに何故わかってくれない!?」
「わかりたくもないね。女の子の純情を汚す奴は、例え優斗であっても許さないよ。」

白鹿は普段では見せない、鋭い眼差しを向ける。

「つーか、いつものスカートめくりは見逃してあげてるんだから、まだいい方だと思わない?」
「ふざけるな!俺にも譲れないものがある!!」

成瀬も負けじと白鹿を見返した。

「俺は女子更衣室に行き女子の着替えを覗く!これは決意だ!例えお前が何度、邪魔しようと俺は諦めない!!」

廊下のど真ん中、成瀬は堂々とそう宣言した。それに白鹿は小さくため息をもらす。

「どうしても諦めてくれないのね。本当は毎回、体育の授業前にアンタを阻止する私の身にもなって欲しかったんだけど…仕方ないか。」

白鹿はそう言うと、パチンと指を鳴らした。

「恵ちゃん、ヨロシク☆」
「任せろなのだ雅!」

そう言って白鹿の後ろから、ひょっこりとぬいぐるみを肩に乗せた小柄の美少女が姿を現す。
白鹿の親友であり、成瀬のゲームの師匠(自称)の日向恵だ。
コイツは厄介だ…と成瀬は思う。毎回日向は成瀬の覗きを阻止する為、得意のゲームに関する難題をぶつけてくるのだ。しかも間違った答えや分からないと言えば、彼女の強烈パンチが降りかかる。

「優斗、先週お主に貸したゲームを覚えてるな?」
「…ああ。あの格ゲーな。」
「ではあの格ゲーの大技、爆裂拳の出し方は?」

いきなりの上級問題。
しかし…成瀬はそれを待ってたとでも言うように平然と答えた。

「左下AABA上右X右だ。」
「なっ!?」

日向は予想外の正解に目を丸くする。

「正解なのだ…だがっ、次は難しーぞ!この前貸したRPGゲーム、東の迷宮のボスの名前は?」
「暗黒将軍アスモダス。毒づきをしてくるヤツだな。」
「っ!?…正解なのだ。」

これには白鹿も驚愕の表情を見せた。それに成瀬は誇らしそうに笑みを浮かべる。

「残念だな。こんなこともあろうかと昨日、日向に借りた事のあるゲームの技、名前、攻略法は全部丸暗記したのだ!!」

高らかに叫ぶ成瀬に、日向はぐぬぬ…と唸った。
因みに、その努力をもっと別の所で使えよ…というツッコミは無しの方向で頼みたい。


「そんなのハッタリなのだ!なら、そのゲームに出てくる魔獣ケルビーを倒すと手に入るレアアイテムは!?」
「セフィロの果実だ!」
「はうっ!?」

日向はついに床に膝をつく。やられた。成瀬を倒すことはできぬと悟り、彼女の心は奈落へとつき落とされてしまった。

「うう…雅ぃ。わっちにはもう無理じゃあ〜。」

日向は泣きながら白鹿に抱きつく。普段の彼女なら萌えたぎる所だが、状況が状況。白鹿は成瀬を睨んだ。

「恵ちゃんを泣かせたね。さすがの私も怒ったよ?」

白鹿は右手を天高く上げた。その手に持つのは一つの鈴。

「…何をする気だ?」
「本当は使いたくなかったんだけどね。優斗のせいだぞ?」

そう言うと白鹿は鈴を鳴らした。

チリンチリンっ

鈴の音が校舎の中を響き渡った。すると…





「くっ、なんなのだ!わが右手に共鳴するこの音色は一体…」
「げっ…石川先輩!?」

どこから湧いて出たのか、右手を押さえた銀髪の生徒。三年、石川太郎がやって来たのだ。

「よく来てくれました石川先輩☆」
「む、貴様か。先程の音の正体は…」
「そんな事より、優斗が大変なんです!」

「俺っ!?」

まさかの白鹿の台詞に成瀬のは驚いた。

「なんか興奮してるし、いつもと雰囲気が違うんです!!」
「はあ!?」

いきなり訳の分からない事を言い出す彼女に、成瀬は唖然とする。が、石川を奮い起たせるには充分だった。

「何、とうとう貴様も力が覚醒したのか!」
「な、違…俺は女子更衣室に」
「いや、わかるぞ。わが悪魔が共鳴してる!!」

石川はそう言い彼の手を掴む。その行動に、成瀬はゾクリと気味の悪い悪寒が背筋を駆け巡った。

「成瀬!今こそ私と契約を結ぼうではないか!」
「やめろ触るな!俺は男と戯れる趣味はねえ!!」
「さぁ成瀬よ!」
「い、嫌だぁぁあー!!」

成瀬は手を振りほどき、女子更衣室とは逆方向へ逃げていく。石川は成瀬の後を追い、廊下に残ったのは白鹿と日向の二人だけとなった。


「ふう、これで優斗も女子更衣室に行けないでしょ。」
「雅、わっちの仇をとってくれてアリガトなのだ…。」

一息ついた白鹿に、日向は先程の涙を拭いながら謝意を述べた。その姿に白鹿が萌えないハズがなく…

「恵ちゃん可愛いー♪今からお茶行こ!」
「…授業があるのだ。」
「あ、そっか。」

そう言って白鹿は笑う。こうして彼女は、今日も女の子の平和を守ったのであった。





 

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