おお振り(小説)
□‐雨‐
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「オレ、雨って嫌いだったんだー」
‐雨‐
「は?雨、好きなやつなんているのか?」
今、オレは水谷の家に来ている。
外は雨(台風)、部活は中止。
「うん。いるよ」
そう言って君は窓の外を見つめながら綺麗に笑う。
悲しそうな切なそうな、綺麗な笑顔。
…あぁ分かった、栄口だ。
そんな顔をさせるやつは栄口だ。
君はいつも栄口のことを考えるとその笑顔になる。
「オレも雨嫌いだよ。野球出来ねーし」
「そぉ。オレもそうやって栄口に言ったんだぁー」
やっぱり、雨が好きだと言ったのは栄口だった。
「そしたらさ、野球出来ないのはヤダけど、雨の匂いとか、音とか、好きだって」
「そんなこと言われると、雨、嫌いになれないよねー…阿部?」
いつのまにか、オレは水谷を抱きしめていた。
「みずたに…」
そして、見つめあってキスをする。
幸せな時間。なはずなのに…
「…阿部?どうして泣いてるの?」
オレの頬には一筋の涙が。
「水谷…オレを捨てないで…」
「…へ!?何言ってんの阿部」
ホントに何言ってんだオレ。
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