情熱の扱い方〜前編〜
□刺激はいらん!
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ああ、家って、落ち着く。
ここには人の恋路を邪魔するコブはいない。
好きかどうか悩むような対象もいない。
ついでに、午前中は父は診療だし、母はマンション管理の勉強しに出て行っているし、イモちゃんはもちろんいないし、祖父は庭のどこかにいるらしいし、というわけで、この建物の中には人がいない。
人がいないって気楽。
今、私の耳には祖父が木の枝を切っている音しか聞こえていない。
いい音。
でも、枝が散乱しているんだろうし、あとで庭掃除だな。
ま、いっか。
ああ、落ち着く。
人のいない午前中って気にせずにゴロゴロできるから好き。
・・・・・・と思っていたら、さっき、澤村君から電話が。
「今日、暇なんだよね?鎌倉に桜見にいかない?」
先週も花見したけど、残念ながら後輩君と一緒だった。
しかも後輩君は私にかかってきた電話に勝手に出て、通話相手の澤村君と勝手に話し込み、『翌週は戻っているから誘ったら良い』と言ったらしい。
それで澤村君が電話をくれたわけなんだが。
はっきり言って、エライ迷惑。
何のつもりだ。
あんたは私のマネージャーか!?って。
その他、何を言いやがったんだ。
さて、問題の鎌倉の花見。
花見に何の問題があるのかって思うけど、モンダイなの。
行く、とは言ったんだけど、まだ、パジャマ。
澤村君はどこかに車を停めたら、連絡をくれることになっている。
この時期だし、駐車場はなかなか空かないと決め込んで、だらだらしてしまう。
でも、いつ電話がくるか分からないんだから、本当なら支度だけも済ませておかなければいけない。