情熱の扱い方〜後編〜

□・・・・・・セヨ、乙女!
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「新婚の田村さん、別居中って知ってますか?」
「知らないわよ。そういうこと、言うんじゃないの。」
「でも、参考にしておいたほうがいいかもしれないですよ?特に、宮井さんは。」
「どういうことよ。」

食堂でランチ中。
時間をズラして一人のんびり食べているところに、乱入してきたのは後輩君。
『あ〜、宮井さん、遅いですね!』
とか言って、目の前に座られた。
空いている席、いっぱいあるのに。

この真夏の、室内から見ても茹だるような光の中、暑苦しい人間の扱いに困る三十路の私・・・・・・?

何よ、この構図は。

それから、田村さん?
この間、マレーシアだかインドネシアだかに、結婚旅行に行ったばかりじゃないの。
人事部なんて噂話が集結するような部署だったりするから、信憑性の確認しなきゃいけないような情報は欲しくない。
当事者からの話しか聞きたくないところ。
話題としても品がないし。
まあ、出ていったのが、田村さんなら、確かに人事部のやることはある。
年金事務所に住所変更が必要かも?
あとは通勤交通費か。


・・・・・・でも。

この後輩君、むかつくな。
この私を手玉に取るような引きつけ方をする。
思わず、乗ってしまったじゃないか。
魔術か?
松崎マジックか?

「宮井さん、男に免疫なさそうだから。」

後輩君は上目遣いに含み笑いをしてきた。
私はまだ、鯖の干物の半分も食べていないのに、目の前のお方は、さっさと冷し中華を食べ終え、お茶をがぶがぶと飲んでいる。

「はいはい、そうかもね。」

やっぱり、取り合ってはいけない。
こいつの目的は、私で遊ぶことだ。
どうせ、大した情報でもないんでしょうよ。

食事摂取、再開。

「食べ終わったなら、私の目の前から消えなさいよ。その話題、食事中にはきついんじゃない?TPOってものがあるでしょ。」
「じゃあ、待ってます♪」

・・・・・・厄介。
頬杖を付いて、にこにこしながら、見てくる。
食事中、見られるの、好きじゃないんだけど。
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