情熱の扱い方〜前編〜

□薄いのがお好き?
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《RRRRR・・・・・・》

今日も会社。

電話が鳴りっぱなしなのに、誰も取らない。
これは他の部門の回線。
でも、そこの部門、見る限りでは誰もいない。

石井女史は他の電話を取っているし、私が取るしかない。
取ってみれば、本人不在。
イントラ上の予定には『休』の文字が昨日くらいから毎日毎日。

「申し訳ございません。あいにくお休みを頂戴しておりまして・・・・・・ええ、ええ。次の出社日は・・・・・・」

人事部の常駐メンバーは全員いるけど、社内は人が少ない。
その理由はズバリ!

ゴールデンウィーク!

今週からゴールデンウィークに突入する。
ずっと忙しかったから、夢にまで見たちょっと長めのお休み。
うちの会社は4月29日から5月5日まで平日もすべて休業。
素晴らしい!
素晴らしすぎる!!

あ、いいな〜この人。
有給もくっつけて2週間くらい休む予定になってる。

「次の出社は5月10日となります。・・・・・・大変申し訳ございません。その旨、本人には申し伝えますので。はい、どうぞよろしくお願いいたします。」

ただし、私たち人事部は月次の勤務管理業務があるから、月末月初は絶対に出なければいけない。
だから、5月10日まで有給休暇なんて言うのはアリエナイ。
それどころか、その休みのために前後に濃厚な内容をこなさなければいけない。

私はいつも通り眠い。
そして忙しい。

「イシイちゃ〜ん、これ、頼める?」
「はい。午後イチで大丈夫ですか?」
「石井さん、電話〜。」
「はい、出ますっ!」

忙しいのは私だけじゃない。
部長も大変。
女史も大変。

バタバタしているうちにお昼の時間。
眠い。
ランチの時間はひと眠りしたいんだよな〜。
でも、休めるわけもなく・・・・・・

「宮井さん、ランチ、どこ行きます?」

石井女史といつも通り、ランチ。
ランチだけなのに、彼女は重装備。
ジャケットを着て、バッグを持って書類が入ったトートバッグも持って・・・・・・

「私、このまま障害者雇用の提出行ってきますね。ハ・・・・・・クシュ!」

マスクを付けている。
フロアのドアを開けただけでくしゃみ。
ひどい花粉症らしい。

「すみません。」
「つらそうだね。」
「もう、このシーズン、切り落としたくなりますよ〜。」
「そっか〜、鼻をねぇ。」
「・・・・・・木のほうです。」
「・・・・・・だよね。」

そりゃそうか。
このシーズン、彼女は外に行くとすぐにこんな状態になってしまう。

でも、書類提出は派遣社員の彼女の担当。
私は忙しすぎて代わってあげられない。
せめて花粉症に聞きそうな食事〜と思うけど、なにがあるんだ?
エキナセアくらいしか思い浮かばん。
刺激的な食べ物も却下よね。
インド料理・韓国料理・中華は当分お預けだな。
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